前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて分析し、キラっと輝くキラーチューン(名付けて"キラ☆歌")を発掘しようというこのコーナー。 今回は、バンドの楽曲に着目した。
第6回::バンド・アーティストランキング (2010年1月:前月データより分析)
テーマ
順位
総合
順位
アクセス
指数
タイトル
アーティスト
発売日
タイアップ
1位
5
100.0
能動的三分間 東京事変 09.12.2 グリコ「キスミント」CMソング
2位
16
43.6
fanfare Mr.Children 未発売 東映アニメ映画『ONE PIECE』主題歌
3位
19
41.5
じょいふる いきものがかり 09.9.23 グリコ「ポッキー」CMソング
4位
24
36.8
哀しみはきっと UVERworld 09.10.28 TBSドラマ『小公女セイラ』主題歌
5位
25
36.7
YELL いきものがかり 09.9.23 NHK全国学校音楽コンクール課題曲
6位
26
35.4
孤独の太陽 monobright 09.11.11 NTVドラマ『サムライ・ハイスクール』主題歌
7位
28
35.2
ゴールデンタイムラバー スキマスイッチ 09.10.14 MBSアニメ『鋼の錬金術師』テーマ曲
8位
31
32.9
R.I.P. BUMP OF CHICKEN 09.11.25 (なし)
9位
33
31.8
HANABI Mr.Children 08.9.3 CXドラマ『コード・ブルー』主題歌
10位
40
28.9
見つめていたい flumpool 09.12.23 KDDI「au LISMO」CMソング
11位
44
27.4
Merry Christmas BUMP OF CHICKEN 09.11.25 (なし)
12位
45
27.3
イチブトゼンブ B'z 09.8.5 CXドラマ『ブザー・ビート』主題歌
13位
48
27.0
なくもんか いきものがかり 09.11.11 東宝映画『なくもんか』主題歌
14位
51
26.1
小さな恋のうた MONGOL800 01.9.16 (CXドラマ『プロポーズ大作戦』内で使用)
15位
67
22.6
アニマロッサ ポルノグラフィティ 09.11.25 TXアニメ『BLEACH』テーマ曲
※サポートメンバー込みのバンドで活動する2人組も含める。
 早速、ランキング表を見てみると、楽曲別で総合TOP10入りしているバンドは東京事変「能動的三分間」のみで、総合TOP20まで見てもMr.Children「fanfare」、いきものがかり「じょいふる」のたった3アーティストだ。これは、バンド系のアルバムCDシェアが3割前後あることと比べると、かなり少ない。バンドの場合は、楽曲、演奏、そして生のパフォーマンスなど多面的な魅力で支持されていることが多く、"歌詞"に特化した楽曲ランキングでは上位に出づらいということだろう。但し、この表にはないが、"アーティスト別歌詞ランキング"では、Mr.Chidlren(3位)、RADWIMPS(4位)、いきものがかり(7位)、BUMP OF CHICKEN(8位)、UVERworld(10位)と、人気アーティストの半数をバンドが占めているように、いったん好きになれば、楽曲全部を調べたくなるほど熱いファンが多いというのもバンドの大きな特徴だ。

 さて、バンド楽曲ランキングに戻ると、1位と3位にグリコCMソングがランクイン。グリコは、オレンジレンジ「DANCE2 feat.ソイソース」やLOVE PSYCHEDELICO「Silver dust lane」など、これまでもバンドの躍動感を商品イメージと重ねた話題曲が多いようだ。特に、いきものがかりは3位、5位、13位と上位に3曲も登場。彼らの場合は、バンドでありながら、歌謡曲世代やロック嫌いのJ-POPファンも受け入れられる音楽性が、歌詞人気にも繋がっているのだろう。最新アルバム『ハジマリノウタ』も実に手堅い。

 4位、6位、9位、12位、14位の5つがドラマタイアップ曲で、歌詞検索への影響力の強さが色濃く出ている。このうちmonobright「孤独の太陽」について、シングル自体は自己ベストではないものの、歌詞検索数が過去最高レベルとなっているので、今後の更なるブレイクに期待したい。ちなみに、9位、12位、14位のドラマ主演が、いずれもNEWSの山下智久というのも面白い。彼が出ていると、ドラマへの感情移入度が圧倒的に高くなり、歌詞にものめりこんでしまうのだろうか。(「小さな恋のうた」は新垣結衣が「SONY Walkman」CM内でカバーしている影響が多いことを申し添えておく。)

 それにしても、15曲中13曲が何らかのタイアップ曲で、ノンタイアップはBUMP OF CHICKENの2曲のみ。BUMPがどんな楽曲でも高い注目を集めていると同時に、その反面、ノンタイアップのバンド楽曲は、なかなか一般的には伝わりづらいということが分かる。それは、前述のようにバンドの場合は総合的なアーティスト・パワーで判断されることが多いこともあろうが、05年のサンボマスター、06年のRADWIMPS以降、「歌詞がすごい」と言われるバンドがブレイクしていない事とも関係していそうだ。その意味で、このぽっかりと空いた"文学ロック"バンドが2010年にブレイクするか注目したい。
 以上のように、バンドのヒット自体は総合ではやや目立たないものの、ユニークな特徴が沢山あることが分かった。「ピンチ」は「チャンス」の宝庫なのだ。



fanfare
Mr.Children
 

  07年にメジャーデビューした4人組バンドの7thシングル。前月発表の6thシングル「JOYJOYエクスペリエンス」(個人的にはこちらのコミカルな歌謡ロックの振り切りっぷりも大好き!)とは一転して、こちらはエレファントカシマシを想起させるほど無骨な男を歌いきるミディアムテンポのストレートなロック。(ちなみにエレカシにも「孤独な太陽」という名曲あり。)この無骨さは、三浦春馬主演のタイアップドラマ『サムライ・ハイスクール』の武士道を大いに意識したものなのだろう。09年2月に、トレードマークだったTシャツ×メガネを封印した彼らだが、この2枚のシングルで大いに可能性を広げた。今後、そのスケール感がLIVEパフォーマンスにも表れることでよりビッグになることを期待したい。


「孤独の太陽」monobright


ここではデビュー1年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。

 今月は、女性ボーカリストの菅原紗由理に注目した。彼女は、1990年秋田県出身で、2008年に現在所属するレコード会社のオーディションに合格。その後、東北のタワーレコード限定発売のインディーズ盤を経て、09年4月にミニアルバム『キミに贈る歌』で正式デビュー。この作品は、リード曲「キミに贈る歌」のR&Bテイストと繊細な歌詞世界が話題を呼び、2ヶ月にわたりアルバムTOP100入りのヒットとなった。(現在でも、歌詞検索で2番手の人気曲。)

 今月の好調は、圧倒的な人気のゲームソフト『FINAL FANTASY XIII』の主題歌、挿入歌を収録した2ndシングル「君がいるから」のヒットが大きい。ファイファルファンタジーならではの壮大な世界観と、彼女の美しい声が上手く合致したのだろう。1月27日には1stアルバム『First Story』を発売。倉木麻衣のようなキュートなボーカルと、絢香のようなメッセージ性の強いボーカルを使い分けるのも大きなポイントだ。前者はデビュー10周年で中堅へ、後者は2010年休業となり、新人クラスでライバルのいないこの市場で、どこまで飛躍するか。

菅原紗由理
菅原紗由理の人気曲
順位
占有率
曲名
初収録作品
発売日
1
58.6%
君がいるから 2ndシングル・A面曲 2009.12.2
2
14.7%
キミに贈る歌 1stミニアルバム・同タイトル曲 2009.4.8
3
11.5%
Eternal Love 2ndシングル・2曲目 2009.12.2
4
5.6%
Christmas Again 2ndシングル・3曲目 2009.12.2
5
4.5%
あの日の約束 1stシングル・A面曲 2009.9.30



つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!などでヒットチャート解説に関する連載を執筆中。1月20日に演歌歌手によるJ-POPカバーCD『エンカのチカラ』シリーズで、衝撃ポップスを集めた芳醇盤と、バラードを集めた吟醸盤が発売。都はるみ「心もよう」は、狂気寸前の絶叫にシビれます!よろしければどうぞ♪