誰も知らないところ

インナージャーニー
誰も知らないところ
2026年10月21日に“インナージャーニー”がメジャー1st EP『その瓶を覗けば』をリリース! 今作には、疾走感あるシンガロングナンバーの「Toi toi toi !」や初TVアニメタイアップの「終わらない夜の守り方」、オルタナティブに新境地を開拓した「海底ランデヴー」、そしてタイトルトラック「その瓶を覗けば」など、聞き応えのある全7曲が収録されております。 今日のうたではそんな“インナージャーニー”のカモシタサラによる歌詞エッセイを3週連続でお届けします。最終回は収録曲「誰も知らないところ」のお話です。“愛を信じられないわたし”と“信じたいわたし”が戦い続けてきた日々。今の自身がたどり着いたひとつの愛のかたちとは…。 最後は、EPを締めくくる愛の歌について。愛にもいろいろ種類があるけど、無償の愛ってなんだろう。永遠の愛ってなんだろう。恋と愛の違いってなんだろう。わかるのは、友だちでも恋人でも家族でも、人と人とを繋ぐところに愛が住み着いているということ。ひとりでは完結できない愛というやつの周りには「信頼」だったり「信じる」という言葉がうろうろしていること。 そういえば昔からわたしは、誰かを信じて頼るということが苦手だった。あまりにも人に助けを求められないものだから、たとえば学校を休んだときに友だちに「ノート見せて」と言う労力より、多少風邪がつらくても学校に行くという選択をしたり(迷惑!)、誰かの力を借りるよりは自分1人でやったほうが早いか、と思っていた。両親からは絶え間ない愛情を注がれて育ってきたはずなのに、一体なぜ!人はいつか裏切るものだという根底にこびりついた厄介な価値観。本当の愛とか、愛し方とか、いつかわかる時がくるのだろうか。いつからこんなふうになったのだろうか。 思い出される最初の記憶は小学5年生のとき。なにかの宿題の最後に「親に伝えたいことを自由に書いてください」という欄があり、先生しか見ないよと言われたので「生んでくれてありがとう」と書いた。面と向かって言うのは照れくさいことを書くものだと思っていた。しかし!驚くことに気づいたら親に伝わっていたのだ。先生はよかれと思って報告したのかもしれないけれど、これは小学生サラにとってかなりセンシティブな問題で、まさかバラされるなんて聞いてない。帰ったら案の定「誰かの真似したんでしょ」とか言われて、あ~やっぱり、ちょっと傷ついて、本当の気持ちってそのまま受け取ってもらえないものなんだ、しかも先生も秘密って破るんだ、そうか~、と子どもなりに現実を知った。 それからも、この人なら信じられるかもと思って打ち明けた悩みをあしらわれたり、本当は弱すぎるのに強い人間だと決めつけられたり、心を開いたその先には必ずと言っていいほどささくれほどの小さな悲しみがあった。ただ静かに聞いてくれるだけでよかったのに。そうやって繰り返される小さなささくれ(という名の勝手に膨らませた期待を裏切られただけの感情)によって、心に鎧をつけた悲しい生き物が誕生した。もう人を信じるとか愛するとか、やめよ!わたしはわたしがこれ以上傷つかないように、期待をしないように、気づけば自分と他人との間に一線引くようになっていた。みんな所詮他人だ、人は生まれてから死ぬまでずっとひとりだ。こういう小さなほつれみたいなものは、時が経つにつれてだんだん大きくなっていく。もう思ってること絶対誰にも言わないんだからね!永遠の愛など、無性の愛などない。 ないはずなのに、それでもどこかで信じていたいという気持ちは捨てきれなかった。これが人の性なのだろうか。オペラ座の怪人でクリスティーヌがファントムの心を溶かすような、そんな瞬間がいつかくると思ってしまう。そういえばわたしは大学のゼミで古文を専門としていたのだが、万葉集も愛の歌だらけだった。人は昔から、愛に悩まされ、振り回されてきたのか。 もうずうっと、愛を信じられないわたしと信じたいわたしが心の中で戦っている。けれど、一度きりの人生をかけるとするならばやはり、愛を信じるほうに委ねてみたい。わたしだって絶え間なく注ぐ愛の名を永遠と呼んでみたい。 自分と他人は違くていい。違うから面白い。それなのに交わろうとするから、同じになろうとするから変になる。共感はできなくても理解しようとするように、同じ映画を観たときにまったく違う感想を抱いても、好きな食べ物が違くても、どんな過去を持っていてもいい。それよりも、今わたしの隣にあなたがいるということがなによりの愛なのではないか。別々の、さみしいままの二人が寄り添いあうだけで、世界はちょっとだけよくなるはずだ。 そういうわけで、EPの旅の終着点は安心して心を預けられる誰も知らないところを選んだ。心の鎧も無理に剥がさず、夢の中でも、歌の中でも、誰にもばれない秘密基地のような場所で、ちょっと違うねといいながら笑い合えるような、そういう愛のまま生きていけたらいい。永遠の愛を信じられなくても、瞬間の愛を信じてみたい。瞬間は歌によって永遠になる。今のわたしが残したい永遠の愛ってたぶんこういうことなんだと思う。今じゃなくても、何百年も先のあなたがこの歌と出会ってくれたら大変嬉しい。 <インナージャーニー・カモシタサラ> ◆メジャー1st EP『その瓶を覗けば』 2026年10月21日発売 配信: https://innerjourney.lnk.to/Messageinabottle <収録曲> 01.その瓶を覗けば 02.風のひと 03.Toi toi toi ! 04.海底ランデヴー 05.ノイズラジオ(AL ver.) 06.終わらない夜の守り方 07.誰も知らないところ















