橋場の渡し

蝉は三日で 蛍は二十日
いのち限りに 生きるなら
あなたについて 江戸を出る
親や世間の 岸辺をはなれ
橋も掛からぬ 橋場の渡し

北は陸奥(みちのく) 東は上総(かずさ)
舟の向くまま 風のまま
菅笠(すげがさ)抱いた 二人づれ
そっとつないだ 手と手のぬくみ
恋の闇夜の 橋場の渡し

瓦竈(かわらかまど)の 煙が揺れる
揺れぬこころの うれしさで
あなたの顔を のぞき見る
もっと漕ぎやれ 船頭さんよ
恋の道行き 橋場の渡し
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