北の噂

風の噂を 尋ねて歩く
北のはずれの さびれた港
迎えに来る日を 待ち佗びながら
流れ流れた お前を偲びゃ
海猫の声さえ ただつらい

潮の香りに せつなく浮かぶ
長い黒髪 ほどいたあの夜
はじめて見つけた 倖せですと
胸にすがった かぼそい指で
酒を注ぐのか いま頃は

霧の夜更けの 灯台あかり
寒い心に ことさら沁みる
泣いてやつれた 小さな肩を
せめて支えて やりたいけれど
遠く霧笛が 鳴るばかり
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