居酒屋「ての字」

我慢我慢の 世間の風に
よくぞ耐えたぜ 春・夏・冬と
風にゆらゆら 提灯(ちょうちん)揺れて
今夜は早い 店じまい
暖簾(のれん)下ろして 手酌で飲めば
やけに やけに 沁(し)みるぜ 苦い酒

こんな店でも 俺には城さ
古い品書き 値段も変えず
男ひとりで 切り盛りすれば
窓から月が 覗(のぞ)いてる
紺の作務衣(さむえ)に 前掛け締めて
作る 作る お通し 母の味

愚痴を肴(さかな)に 呑む奴(やつ)いれば
なぜか泣き出す 困った奴(やつ)も
みんな気のいい 面子(めんつ)が揃い
想い出話 花が咲く
暖簾(のれん)一代 居酒屋「ての字」
明日(あす)も 明日(あす)も 飲もうぜ 夢見酒(ゆめみざけ)
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