青く短い春

憧れは、募らせて
叶わないでいたほうが
尊いかもしれないなんて耽っていた

さあ夏が兆した
氷雪のように無知で鋭くて
それでいて、とても愚かで…輝くの

酸いも甘いも知らぬから
愛を過信するのだ
若さ故の未熟さを
嗚呼どうか殺さないで

わざとらしい常識や
恩の着せ合いに、少し
侵されたかもしれない
なんて浸っていた

嗚呼夏を迎えた少女は
自由を求めて思いがけずに
その歯車を…
狂わせた。

酸いも甘いも知らぬまま
自由になれるものか
夏追い暮れゆく春に
悲しみが覗いた

少しの自己嫌悪と、
喧騒、孤独が私を
かけがえのない
たったひとりにしてくれた

酸いも甘いも知らぬまま
大人になれなくても
幸せが此処に在ったのだ
ああもう戻れないのね

淡くて甘い落日を
速く駆け抜けた日々の
名は青く短い春
さあもう振り向かないで
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