紛い者の万年筆

22:00分着
67号の新幹線
冷え切ったホームに微かな人の余熱

熱量(カロリー)過多
思春期経由で些細な大発見
想像以上に僕には才能が無い

目を開けて
確かめて
傷ついて大人になった
僕の声は
情けなくて 苦しくて
それでも僕は
伝えたくて
わからなくて
ペン先で何度も心を削る
今描いてみせるよひとつだけ

側に居てくれてありがとう

午前6時20分の
アラーム鳴る真冬の土曜日
もう伸う伸うと過ごせるような歳じゃない

「好き」だなんて単純な
気持ちで何だってできるのは
“今だけ”だったって
わかってたよ

顔上げて
受け止めて
見送って
子供だったあの日の僕を忘れないで
苦しいよ
それでも僕は
叫びながら
泣きながら
ペン先で何度でも心を描く
今伝えてみせるよひとつだけ

ここに居てくれてありがとう

そう
何だって悲しいことばかりを数えている
空になった部屋も教室も
喪った人のその温もりも
僕は所詮紛い者だ
他に何も要らないね
今 真っ直ぐに見せよう
僕は心を削って
描く
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