愛愁路

ひとりですかと 訊かれてほろり
ここはふたりの 別れ宿
酔って甘えた 寄せ書きの
古い思い出 目でなでりゃ
肩が淋しい 小室山

他の誰にも あげたくないと
誓い交した 唇も
逢えぬ月日の せつなさに
負けて涙の 城ヶ崎
伊豆の夜風が 袖しぼる

たとえ荒浪 枕にしても
添い寝かもめは しあわせね
せめて空似の 人でよい
揃い浴衣の 片袖で
涙ふきたい 伊豆の夜

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