忘却の刻

鏡に照り返す 朝焼けに目を細め唇に問う
忘れていった指輪 あなたはわざとらしく外してた

ばかばかしいそんな事など 優しくもなく怖くもない
風に揺れ白いレースが 二人の屍をさらってく

あなたと同じ 空気を吸って目覚めさせて
夢から覚めないように 眠らずただ独りで愛を刻んでく

薄化粧の三日月 シーツの波打ち際 つま先を入れ
あなたを待ちわびる 夜の浅瀬の静けさが好きよ

誰一人会った事などない他人の話を聞き
笑ってる私の顔を 素敵だなんて言わないでね

望んでるのは 形があるものじゃないのに
触れた後淀み無く 「ごめん」とまたあなたは愛を置き去る

越して来たばかりの殺風景な 部屋で午後8時
頬と手、吸い込まれ 溶け出してく 至福の海へ沈む
刻は刻む 突き刺されて 脱皮してく刻
「ねえ、愛してる?」
「愛してるよ」
「本当に?」
「意地悪言うな、
「もう、終電の時間? …ねぇ、」
終電の時間だ」

あなたと同じ 空気を吸って目覚めさせて
夢から覚めないように 眠らずただ独りは…嫌

「愛しています。」 それ以外何も持ってないから
後出来るのはそれを 投げつけただ心の時計を壊すだけ
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