温度計

口ごもるニュースのあとで「ブラジルの朝です」ってしゃべりだす
セキセイインコは この部屋のたった一つの機械のようです
眠らないはじまって終るのに
眠らない眠れない朝
真中のテーブルで君と二人きりで爪をかじるだけの
朝食の時間です

八月の時計みたいに部屋をきざんでゆく温度計の下で
君は裸のまま
昼みた太陽が虫のように目の前をチラチラとびまわるので
夢中でそれを手ではらう
君はとどかないことだけみちてる

真夜中 月の下で 乾いた白いシャツを君にきせて遠く浅い夢をみにいこう
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