空飛ぶ鯨の話

ある朝ある町で鯨が空を飛んでた
海よりも広い大空 夢を求めて飛び立った
昔の森の中には鯨が暮らしていた
しあわせの花の咲いてた森で楽しく遊んでた

いつか時代(とき)の流れに押し流されて
海に沈んだ可愛そうな鯨

今では海でさえ鯨は暮らせなくて
せっせと羽根を作って狭い波間を飛び出した

話は五十年経った後の出来事
宇宙には夢が広がる
だけど地上は荒れ果てる
みんなはある町の窓から鯨を見た
大空が暗くなるほど鯨で空は埋(うず)まった

いつか人の流れに押し流されて
空に飛び立つ可愛そうな鯨

その日の昼過ぎに哀れな鯨の群れは
つぎつぎに撃ち落されて
魂だけが飛んで行った
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