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THEラブ人間 ライヴレポート

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【THEラブ人間 ライヴレポート】 『THEラブ人間単独公演 「十年ののち〜振替配信公演」』 2020年8月22日 at 下北沢近松

2020年08月22日@下北沢近松

取材:千々和香苗

2020.09.02

※セットリストを含む楽曲レポートを掲載しています。これからアーカイブでご視聴される方はご注意ください。

2020年5月に渋谷CLUB QUATTROで開催予定だった結成10周年記念ワンマンが新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて中止となり、その振替公演を8月23日に開催。この日は30名限定で観客を入れ、ステージとフロアーはアクリル板で仕切り、配信も込みで行なわれた。会場となった下北沢近松は2017年に閉店した下北沢CAVE-BEの跡地にできたライヴハウスで、バンドを結成した場所でもある。予定とは異なるかたちでのワンマンライヴにはなったが、10周年の締め括りとしても、さらにエンジンをかける場所としても、ぴったりだったように思う。

開演するとオープニング映像が流れ、金田康平(歌手)のナレーションとともにメンバーと下北沢の街並みが映し出される。その映像が終わると“曲名は何にしようか?”と結成当時を再現するように話しながらTHEラブ人間で最初に作った曲「りんごに火をつけて (Light My Apple)」を披露。バンドの歴史や時間の流れを思わせる演出に、彼らがベスト盤のリリースや主催サーキットキイベント『下北沢にて’19』の2デイズ開催など、さまざまな試みをしてきた10周年にいよいよひと区切りがつくことを実感した。

現在のメンバーは、金田、谷崎航大(バイオリン)、ツネ・モリサワ(キーボード)、富田貴之(ドラム)の4人で、これまでに何度もメンバーチェンジをしながら進化してきたTHEラブ人間だからこそ、前半のセットリストではこれまでのバンドの変化がじっくりと感じられた。2曲目の「わたしは小鳥」で金田は“人前で歌うのってこんなに楽しかったっけ!?”“あぁ、気持ち良い!!”と、久々の観客を目の前にしていつも以上にエネルギーが漲っている様子。カントリーテイストの明るいサウンドにのせて《きみはぼくの宗教》と熱唱するこの曲のように、THEラブ人間にはバイオリンとキーボードの滑らかさと、ギター、ベース、ドラムのロックサウンドが合わさった激しくも柔らかな特徴があったが、2014年から坂本 遥(Gu)の加入でギターが2本になったことも後押しして、さらにメロディアスになっていった「幸せのゴミ箱」「じゅんあい」を続けて披露。この日も長く付き合いのあるベーシストの梅津拓也をゲストに迎えた他、前述の2曲を含む数曲はギタリストのヒロヒサカトー(井乃頭蓄音団)が参加した。《君の隣でだけ歌えればいいんだ/錆びたギターでとっておきの新曲を》(「幸せのゴミ箱」)という歌詞にもバンドが開けていった印象があり、セットリストには入っていなかったが「FUSHIGI DANCE」「最高の夜にしようね」など、同時期に発表されたキャッチーな楽曲たちのことも思い出す。また、「じゅんあい」からはコーラス&アコースティックギターでむらかみなぎさが参加し、金田が“最近出会ったけど、自分の歌にいてほしいと思った”と紹介したように、彼女の柔らかな歌声が加わって新鮮味もあった。

MCで富田から“今日は語彙力が低めですね”とツッコミが入るほど、大笑いしてひたすら楽しそうな金田。政府が発表したガイドラインに沿って実施されたライヴのため、普段のように観客が声を発することはできず、リアクションが薄く感じてしまうこともあったが“圧倒されてるな。久々にロックを浴びちゃって何も言えねえみたいだ”と冗談を飛ばす場面も。また、3月の緊急事態宣言からの現状を振り返り、“俺は昔から言ってるけど、踊れなくても、歌えなくても十分楽しい、音楽ってそういうもの。だから、配信も向いているかもって思ってた...でも、全然違いました!”と、ライヴができる喜びを改めて言葉にした。

そして、3月にリリースした最新アルバム『夢路混戦記』から「虹色のスニーカーで」をプレイ。さわやかで清々しいサウンドに合わせて《ああ 虹色のスニーカーでどこまでも》と合唱し、途中で配信画面がモノクロからカラーに変わる演出も。しかし、アウトロからは一転して“ずっと遠くに行けるわけない。こんな東京の街じゃ”と金田が呟き、「東京」のイントロにつながった瞬間にはシビれるものがあった。感情の起伏を表すような、「虹色のスニーカーで」で歌う希望に至るまでに、誰もが「東京」で歌うような孤独を抱えているというメッセージにも思えたし、痛みも寂しさも愛も幸福も歌ってきたTHEラブ人間をギュッと詰め込んだ流れにも感じられる。この日の「東京」は“孤独も自分次第でどうにでもなる、甘ったれるな”と頬を叩き、それでいて包み込むようなやさしさのあるパフォーマンスだった。金田がメロディーに乗せた“擦り切れるまで笑え、枯れ果てるまで泣け”という言葉は、この曲の最後のフレーズ《いつだって肩をすくめてしまうなら心臓を見せ合えばいいんです》のもうひとつのかたちなのだろう。

その後、「大人と子供(初夏のテーマ)」「bedside baby blue」「コーラフロート」、MCを挟んで「ニ十才のころ」を聴く中でも、“ラブソングのみを歌う音楽集団”とはいえ、それぞれまったく違う愛のかたちが浮かんでくる。金田が言った“歌にはそれぞれ物語がある”という言葉に要約されるけれど、それこそがバンドが変化していく中で変わらずにあったことなのだと思った。

後半戦はまず「コント」「クリームソーダ」とポップで明るいナンバーをチョイス。続く「ズタボロの君へ」では《ズタボロのままで行け》と自分自身を奮い立たせるように、喝を入れるように歌うメンバーと、時折その声を聴いて噛みしめるように天井を見上げながら歌っていた金田の様子が印象に残っている。また、THEラブ人間は音楽と同じくらいに言葉も大切にしているバンドだと思っていただけに、金田が“俺にとってのTHEラブ人間は言葉との戦いでした”と話したのは意外だった。“音楽は言葉なんかを超越してビビッときたり、ちょっと寂しくなったり、みんなとコミュニケーションがとれる。だけど、まだ足りなくて。カッコ悪いけど、音楽だけじゃまだ足りなくて、今日も俺は言葉を使ってる”と葛藤があったことを話し、その上で“部屋で勝手に歌っときゃいい俺の歌を拾ってくれたみんな。何の薬にもならない俺の歌を拾ってくれたみんな。俺たちの歌と友達になってくれて、本当にどうもありがとうございました”と音楽を通じて会うことができたオーディエンスに心からの言葉を届けるのだった。

続いて“今日は言うぜ、10周年だから”と前置きして、初めて自ら“代表曲”紹介した「砂男」。“何度歌ったか分からないこの曲を、何度も何度も聴いてくれてありがとう”と伝えるも、そのあとに“10周年、屁じゃねえ! 二十年、三十年、屁じゃねえ! 「砂男」、代表曲、屁じぇねえ!!”と言い放ち、この10年間を“たかが10年”とでも言うように背を向けて「砂男II」を投下。サビで《ああもういっそ全部捨てろよ》と歌うこの曲を作ったのは、今までのTHEラブ人間に踏ん切りを付けるためでもあったのかもしれない。金田が本編の最後に言った“10年間ありがとう”という言葉は別れの言葉に聞こえた。

アンコールで披露された「ばらの坂道」ではMVを再現するべく、過去のライヴ写真やTシャツなどの思い出の品をステージにばらまいて演奏。これまでの一日一日を燃やしていくように、《過ぎ去った過去よりも今が最高》と力強く歌う姿がこの日の何よりも眩しかった。ここまで“10周年”と何度も言ってきたが、結成は2009年1月、実はすでに12年目に突入している。今登っている坂道なんてすぐに越えてしまうのではないかと思うくらいの熱量と自信、それでいてまだまだずっと登り続けていくのだと感じる気迫を目いっぱいに感じながら、オーディエンスに“心の中で歌え!”と言って「これはもう青春じゃないか」を熱唱する景色を目に焼き付けた。

※配信ライヴのアーカイブ映像は、9月5日(土)までTwitCastingで公開中!

取材:千々和香苗

THEラブ人間

ザ・ラブニンゲン: 2009年に結成されたラブソングのみを歌う音楽集団。下北沢を中心に活動し、10年からは街全体を巻き込んだ決起集会『下北沢にて』を開催している。結成10周年を迎えた19年10月に初のベストアルバム『PAST MASTERS』をリリース。

SET LIST 曲名をクリックすると歌詞が表示されます。試聴はライブ音源ではありません。

  1. 3

    3.幸せのゴミ箱

  2. 4

    4.じゅんあい

  3. 5

    5.虹色のスニーカーで

  4. 9

    9.コーラフロート

  5. 10

    10.二十才のころ

  6. 11

    11.コント

  7. 13

    13.ズタボロの君へ

  8. 15

    15.砂男II

  9. 16

    <ENCORE1>

  10. 17

    1.ばらの坂道

  11. 19

    <ENCORE2>

  12. 20

    夢老い人

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