―― 歌詞面で、“名誉伝説らしさ”が確立されたタイミングというといかがですか?
けっさく 今作の5曲目「プロポーズ文句」かもしれません。これは初期に作った曲で、自分でも気に入っている歌詞ですね。まず、「好き」という気持ちを、いかにまだ出会ったことのない表現、かつ、わかりやすい言葉で書けるかどうかが、歌詞における勝負だと思っていて。だからこそ、視点を工夫したんです。
プロポーズをしようと思っていた<僕>が、どうやって好きなひとに思いを伝えるか、箇条書きでメモ帳に書いていくような構成で。そして、そのメモ帳を、結婚して何十年か経った後にふたりで読み合っているというストーリーになっています。すると、物語を想像しやすいし、聴き手も一緒にそのメモ帳を読んでいるような感覚にもなるし、恋人と一緒に聴いてもらうのもよいだろうし、いろんな聴き方をしてもらえるかなと。
そういう歌詞を文字で読んだときのおもしろさは今も意識しています。でも、「こうしていこう」と最初から決めていたわけではなくて。「プロポーズ文句」ができたことで、テーマや構成などに自然と“名誉伝説らしさ”が出てきて、そのあとに繋がっていった感覚があります。これをこたにが歌ってくれたときに、バチッとハマったので、「これだな」と思ったんですよね。
こたに 私は初めてこの曲を聴いたとき、くすぐったい気持ちになったのを覚えています(笑)。主人公がすごくかわいい。男の子がプロポーズを考える裏側を見ることができる機会なんてあんまりないじゃないですか。そこを歌詞で描くことができるって、素晴らしいなと。たしかに「プロポーズ文句」はすごく名誉伝説らしい1曲だと思いますね。
―― 1st FULL ALBUMの『OK集』というタイトルは、どのようにたどり着いた言葉ですか?
けっさく 名誉伝説は初期から今までずっと、声にならなかった感情や本音、願い、内にある弱さなどを歌ってきていて。そういうものが溜まったとき、過去の自分を切り捨てるだけでは、心は軽くならないと思うんです。
どんな感情も、そのひとが生きてきた証だから肯定したい。恥ずかしいと思ったり、「こんなことを思ってはダメだ」と思ったりして、自分で自分に出してきたNGも、すべて採用してあげたい。そんな“NG集すらもまとめて肯定したい”というテーマから、『OK集』というタイトルに決めましたね。
―― なぜ、“肯定したい”という気持ちがずっとけっさくさんの根底にあるのでしょう。
けっさく 学生の頃から、人間の心におもしろさを感じていたような気がします。クラスのなかでも、ひとそれぞれの考えがあって、ぶつかり合ったり、言わずに抱え込んだりするじゃないですか。そういうときに、「でもこのひと、本当はこう思っているんじゃないかな?」と想像することが多かったんですよね。
今でもSNSを見ていて、「なんでこんなことを書くんだろう?」と思うようなことが、どんどん増えていて。きっと人間って、隠し持っているものが8割くらいなんだろうなと感じるんです。そして、気づいたらそういう本音をたくさん曲にしていました。だから、今作も最初から“肯定したい”というコンセプトで作り始めたわけではなく、振り返ってみたら、いろんな曲に共通して“肯定したい”という気持ちが流れていたんだと思います。
―― 今作のなかで、とくにこたにさんにとって、思い入れの強い楽曲を教えてください。
こたに いちばんは11曲目の「希望法」ですね。この楽曲は、今までやったことのないソウルバラードみたいな曲調なんですけど、けっさくの歌詞もいつものコミカルなものと違っていて。また違う軸での本音が書かれているように感じるんです。
だから、私は曲によって世界観を合わせて、主人公が憑依するような感覚で歌うことが多いとお話しましたが、「希望法」はありのままの自分で歌えたんですよね。スローテンポだったので、ひと言ずつゆっくり自分のペースで伝える感覚で。サビも、いつも以上に感情的に表現できた気がします。
―― この歌は一人称もありませんね。
あと、1番Aメロの<希望は奇跡を待たずに 生きようとする癖のこと>というフレーズもお気に入りです。“希望”って、私はポジティブなものとしてしか捉えたことがありませんでした。でも、“どうしてもやってしまう人間の癖”でもあるんだと気づいて。そういう視点で描くことができるのがすごいなと改めて感じましたね。
―― けっさくさんには、言葉を“自分なりの意味に翻訳する力”がありますよね。“愛”や“希望”といった言葉を、ご自身の視点から再定義されているように感じます。
けっさく 視点を変えたり、逆転の発想をしてみたりして、そこからおもしろさを拾うことが多いですね。あと、その言葉を“行動”で表してみたとき、それはどんなものなのか想像してみることが好きなんです。
たとえば、「希望法」では、“愛”や“希望”という言葉から、“届くかわからなくても、唱え続ける”という行為や“明日を信じ続けて、生きようとする”ひとの美しさを描きたいなと思いました。何かを信じて、唱えて、それが叶うまでの過程って目には見えないけれど、その過程自体を肯定したい。そういう気持ちがありましたね。
―― 「希望法」は、こたにさんがおっしゃったとおり、今までとは違う書き方だったのですか?
けっさく そうですね。シングルとして出す曲は、やっぱりおもしろさやインパクト重視で書くことが多かったんです。でも、「希望法」はアルバム曲だからこそ作りたかったというか。人間の美しさを想像しながら書いていったら、今までにない歌詞になりました。ただ、こたにの声なら、表現が変わっても名誉伝説らしさを失わない。切なさと温かさ、両方を表現してくれるだろうなと思ったので、迷わずに書くことができましたね。


