名誉伝説はけっさくの歌詞の世界観があってこそ完成する。

―― けっさくさんにとって、思い入れの強い楽曲を教えてください。

けっさく 3曲目の「2ndスキン」ですね。個人的に、音も歌詞も好きだし、それこそ今まで築いてきた“名誉伝説らしさ”が強い1曲だなと思います。

―― どのように生まれた楽曲なのでしょうか。

けっさく このアルバムのなかで、名誉伝説らしくて、みんなに聴いてもらいやすい1曲を新たに作りたいなと思って。いろんなジャンルのエッセンスを取り入れながら、リリース時期的に“ハロウィン”を想像できるような曲調にしてみました。だから、歌詞も“誰かを着る”ということをテーマにしたんです。

やっぱり「好きなひとの理想になりたい」と思うひとって、多いじゃないですか。そういう気持ちがどんどん強くなっていった結果、<誰を着よう>とか<君に好かれる皮膚が欲しい>とか、“人間を着替える”感覚にまでなってしまう。好きなひとの理想に合わせていくと、“誰かに愛されるための自分”になる。そういう模様を表現したくて書いた歌詞ですね。

―― 本音は<飾らないままの私を見つめて 傷だらけでも抱きしめてよ>という思いですが、だからといって、好きなひとに合わせてしまう感情自体は最後まで否定しないところも、名誉伝説らしいですね。「2ndスキンなんて脱ぎ捨てよう」みたいなメッセージにはならないというか。

けっさく そうなんですよね。結構、僕の書く歌詞は、「1番と2番で違うひとが言っているんじゃないか?」と思うくらい、違う主張や本音が出てくることが多いんです。だから「2ndスキン」も、途中で<飾らないままの私を見つめて 傷だらけでも抱きしめてよ>という本音を言うのに、結局はまた“誰か”に着替えてしまう。でも、そうやって同じことを繰り返してしまうのが人間なんじゃないかなと思います。

―― こたにさんは「2ndスキン」を聴いたときの印象はいかがでしたか?

こたに 音も含め、最初に想像したのは、無機質な操り人形みたいな雰囲気でした。だから、歌でも“好きなひとの理想に合わせて繕った自分”を表現できたらと思って、少し無機質に声を入れてみました。今作に収録されている新曲のなかでも、いちばんけっさくらしいワードのおもしろさが出ている曲ですね。<ヒューマンコスチューム>とか、<100% MADE IN 君の理想郷>とか、これが歌詞になるってすごいなって。

けっさく そう、そこは「僕が歌ったらヤバいな」と思ったんだよね(笑)。こたにだったら大丈夫だろうと思って、攻めたフレーズを書くことができました。

こたに 歌詞のテーマ的には、すごく楽しい曲ではないけれど、本当に名誉伝説らしさが色濃く出ている曲なので、みなさんにその世界観を楽しんでほしいですね。

―― こたにさんの歌声の表現力もやはり唯一無二ですよね。たとえば、1曲目「新女神」の<うわあああ>なども誰にも真似できないテンション感だなと。毎回、歌のディレクションはどのようになさっているのですか?

こたに 基本的には、曲をもらって、まずは自分の解釈で歌ってみます。そこから、チームやけっさくのほうから、「ここはもう少しこういうふうに」というやり取りがところどころある感じです。<うわあああ>はたしか、「驚いていることが伝わるように」というディレクションがあったような気がします。

けっさく でも、僕もある程度は伝えるのですが、結局はこたにから自然に出てくる癖や表現がいいので、こたにに任せることが多いですね。そのほうがおもしろいものが出てきます。

<うわあああ>も、最初はただ「Uh-ah」と書いて、仮歌のコーラスを入れていました。でも、自己肯定というテーマと、姿見のなかの自分に対して<誰だこの尊い人間>と驚いている様子と、こたにの歌声が合わさったとき、<うわあああ>とひらがなにしてみたら、ものすごくハマったんですよね。

―― では、今作のなかで、それぞれお気に入りのフレーズを教えてください。

こたに 6曲目「ブルーモーション」の<季節のように生まれ変わってゆけ 新しい出会いを探してゆけ 明日はどんな色の君を見れるかな 自分のフレームを壊してゆけ 新しい道に飛び込んでゆけ 君に限界なんてないんだ>という歌詞がとても好きです。ライブでお客さんに届けるとき、いちばん気持ちを込められるし、いろんなひとの思いを想像しながら歌える。そして、自分自身に言い聞かせるフレーズでもありますね。

けっさく 僕はまず12曲目「隣の神様」の<君が涙流す時は 僕がハンカチーフになろう>というサビですね。このフレーズは、ずっとどこかの曲に入れたいと思っていたんです。誰かに救ってもらうのではなく、自分自身がそのひとにとっての救いになりたい。必要なときに支えられる存在でありたい。そういう寄り添い方の愛を描きたかったので、書けてよかったですね。

もうひとつは、こたにと同じく「ブルーモーション」です。<間違った道を選んでも 僕が全て正解にしよう>というフレーズが気に入っています。寄り添い方が「隣の神様」の<僕>に近いですよね。

―― 今作の全12曲を聴いて、けっさくさんの歌詞はひとりで完結するのではなく、必ず“他者”がいるように感じました。

けっさく おっしゃるとおりですね。僕は多分、「人間はひとりで生きていけるものではない」という気持ちが強くて。それゆえに、目の前にいる相手がどう思っているのかすごく考えてしまうし、お互いに“肯定”という意味で支え合っていきたいし。世界にひとりだけなら、僕は曲が書けないですね。だから、“どんな感情もあっていいんだよ”と、すべてを肯定する思いが名誉伝説の歌詞には大きく影響しているのだと思います。

―― ありがとうございました。最後に、名誉伝説にとって歌詞とはどんな存在ですか?

けっさく 本を読んでいるときって、わりと冷静に物語を受け取るじゃないですか。でも、音楽には自分の悩みを乗せられる。だからこそ、楽しく音楽を聴いている時間に、歌詞がそのひとの悩みに寄り添って、いつのまにか何かが解決していたりするものであってくれたらいいなと思っています。

こたに けっさくの作るメロディも唯一無二ですが、私がこのバンドをやりたいと思ったいちばんの理由は、けっさくの歌詞だったし、名誉伝説はけっさくの歌詞の世界観があってこそ完成すると思っています。

そして、私自身、わりと本音を繕ってしまうタイプなので、歌の主人公の本音を自分の声で歌うという行為が、自分のためになっているところもあります。だから、名誉伝説の歌詞は、私の救いであり、聴いてくれるひとにとっても、そういう存在であったらいいなと思いますね。


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