感情に骨格を与えよう
何者だろうヒューマンコスチューム ヒューマンコスチューム
君に好かれる皮膚が欲しいよ
ゴールドファブリック ゴールドファブリック
100% MADE IN 君の理想郷もっと歌詞を見る
―― おふたりが人生でいちばん最初に音楽に心を動かされた記憶というと何が浮かびますか?
こたに 私は小学生の頃、小田和正さんの「ダイジョウブ」の歌詞を見てホッとしたことですね。今でも、すごく力をもらえる歌だなと思います。
―― 子どものころから歌はお好きだったのですか?
こたに 歌うのは大好きでしたね。家ではずっと歌っていましたし、Wiiでもカラオケをしていました。でも、音楽を職業にしようとか、歌手になりたいとか思ったことはなくて。SNSにも、どこか趣味のひとつのような感覚で、自分の歌を投稿していたんです。けっさくにこのバンドに誘ってもらって初めて、音楽でやっていくことを意識し始めました。
―― けっさくさんはいかがですか?
けっさく 僕は、親の車で流れていた音楽が原点だと思います。中森明菜さんとか、当時の歌謡曲の心地よいサウンドが好きで。幼いながらに、「音楽っていいな」と感じていました。でも、自分自身がバンドをやりたいと思ったきっかけでいうと、中学高校時代に聴いていたRADWIMPSやBUMP OF CHICKENの影響が大きいですね。
―― 最初から、女性ボーカルでのバンドを想像していましたか?
けっさく いや、最初はまったく。自分で歌っていましたし、それこそRADWIMPSやBUMP OF CHICKENのコピーバンドをしていました。こたにを見つけたのは、大学時代ですね。どうしてもバンドをやりたかったのと、自分が作った曲を別のひとに歌ってほしかったのと。僕が歌いたいというより、ボーカルのために作って届ける形がいいなと思ったんですよね。
―― おふたりは、人生でいちばん最初に書いた歌詞って覚えていますか?
こたに けっさくに誘ってもらったほぼ同タイミングで、自分のソロ活動も始めたので、そこから歌詞を書き始めて。初めて書いたのは、2020年くらい。姉に向けて書いた「帰っておいで」という曲です。姉がすごく仕事が大変な会社に入っていたので、帰ってくることのできるあたたかい場所がひとつあったらいいなという思いで。姉はお酒が好きなので<君の好きなお酒買って 待っている>というフレーズを書いたりしましたね。
けっさく 僕も同じく2020年に初めて書いたと思います。自分も歌ってSNSに載せるみたいなことをしていたので、自分で歌うオリジナルソングの想定だったんですけど。「好き」とか「愛している」みたいな気持ちを、何かに言い換えて歌うみたいな歌詞だったと思います。いちばん最初に書いたものなので、世に出せるようなクオリティではないのですが…。まだ、今の名誉伝説の歌詞ともまったく違う感じでした。
―― こたにさんは、名誉伝説で歌詞を書きたくはならないですか?
こたに 名誉伝説では、けっさくの作る世界観のなかに入っていって歌うのが楽しいので、100%けっさくの歌詞で歌いたいんですよね。自分とけっさくでは、歌詞の作り方も内容もかなり違うので、もしも書きたいものができたとしたら、多分ソロで出すような気がしています。
―― では、改めて他己紹介をするとしたら、お互いはどういうひとだと思いますか?
こたに これは私がずっと言っていることなのですが、ひと言でいえば「シュールなひと」ですね。歌詞もシュールでコミカルなんですけど、わりとけっさく自身もそのままというか(笑)。普通のひとより、いろんな物事を鋭い視点で見ていますし、日常で喋っていてもクスッとおもしろいことを言うので、シュールなひとだなぁと。
けっさく こたには、こうして穏やかで、本当に草原みたいな雰囲気なんですけど(笑)、しっかり根に意見があるひとですね。ふわふわしていそうで、考えているし真面目。そういう印象がありますね。
―― けっさくさんは今、作家として、こたにさんの歌声にはどんな力や特性があると感じますか?
けっさく 初めてこたにの歌声を聴いたときから、ずっと思っていることは、「儚さがありながらも、温かみや芯のある唯一無二の魅力があるな」ということですね。
僕はそれこそシュールでコミカルな歌詞が好きなんですけど、それを僕が歌ったら多分、浮いてしまうと思うんです。でも、こたにが歌ってくれることによって中和されるというか。そして、ちゃんとひとりの人間がいるような人間味のある主人公が生まれる感覚があります。
―― こたにさんが主人公そのものではないけれど、こたにさんの声だからこそ血が通う主人公像がありますよね。
こたに 私も名誉伝説の歌詞のなかだからこそ、成立している主人公がいるなと思います。だから、歌うときには、自分を完全に消して、歌詞の主人公を憑依させている感じなんです。曲ごとに人格はかなり違うんですけど、毎回その主人公を想像しながら、その子になりきっていますね。
―― 毎回、主人公像はどのようにできあがっていくのですか?
けっさく 最初にメロディを作って、アレンジまで詰めて、最後に歌詞を書きます。そこでまずテーマを決めるのですが、それは僕が世の中のことを考えながら選ぶことが多いです。
そして、みんなが抱えている悩みや、思っているけれど言えない感情を、代弁するようなわかりやすい言葉を意識して歌詞を書いていきます。そのときにこたにの声を想像しながら、主人公像を描いていくのですが、「どんな表現で書いても、こたにならうまく中和してくれるだろう」という信頼があるので、制限などなく自由に作っていますね。
―― こたにさんというボーカルによって、むしろ歌詞が書きやすくなったのですね。
けっさく そうなんですよね。たとえば、今作の10曲目「トランスファー」の<恨み憎しみで満杯の私が 黙ってるとでも思った?>みたいなフレーズをケンカ腰に歌われても、聴いているひとが怒られているみたいな感覚になると思うんです。
でも、派手な言葉、普段は言えないような言葉、歌詞ではあまり使われないような言葉も、こたにが歌うと不思議と成立するんですよ。だから毎回、迷わずにおもしろさを優先できるというか、いろんな幅で表現することができていますね。
―― こたにさんは、歌詞面でのけっさくさんのらしさとはどんなものだと思いますか?
こたに 具体性のあるワードの強さですかね。私からしたら、「どこから出てくるんだろう?」と思うような、見たことのない組み合わせの言葉がおもしろくて。でも、すごく具体的な一方で、多くのひとに刺さる抽象性もある。私自身、その歌詞世界を想像しながら歌えるのですごく入り込みやすいですね。
―― なぜ、そういう歌詞が書けるのでしょう。
けっさく 書くこと自体は、小さい頃から得意でも好きでもなかったんですけど、やっぱり想像することが好きで。でも、それを言葉だけで伝えるのは難しいじゃないですか。だから、頭のなかで考えているいろいろなことを、うまく歌にできたらいいなとずっと思っていたんです。誰かが説明できない気持ちを描いて、「ああ、これだったんだ」と感じてもらえるような。そこは歌詞を書くときにまず大事にしているところです。
あと、歌詞って、映画のあらすじにも似ているように思います。その作品を観たくなるように、内容をおもしろくわかりやすく伝えてくれているじゃないですか。ひとって“入ってみること”がいちばん難しい。だから、歌詞も、パッと聴いたときにインパクトがあって、すんなり耳に入ることを意識していて。言葉の組み合わせはかなり工夫します。そして、おもしろい歌詞で、誰かの抱えている悩みを肯定できるのが理想ですね。




