最初で最後の“これまでのナナヲアカリ全部のせ”楽曲。

―― 今作『フライングベスト2』では、Disc1の入口となる新曲「ギミギミ聖域」が、Disc2の1曲目でありナナヲアカリのデビューシングルでもある「ワンルームシュガーライフ」の続編のような形になっていますね。

まさに「ワンルームシュガーライフ」から7年経ったナナヲアカリを楽しんでいただきたくて。実は「ギミギミ聖域」も、7年前のデモ曲なんです。メロディーと曲の構成と「ギミギミ聖域」というタイトルはあった。だけど、「今ではないですね」というタイミングが続いて、気づけば7年間も温め続けていました。

それがようやく「今だ!」となって、歌詞をすべて変えて、今回のデビュー7周年仕様になったんですよね。このベストアルバムのタイミングならではのフレーズばかりなので、最初で最後の楽曲だと思います。“これまでのナナヲアカリ全部のせ”のようなポエトリーも書けてよかったです。

―― 「ワンルームシュガーライフ」では<この部屋の中ならきっと明るいよ>と歌っていましたが、7年経った「ギミギミ聖域」では<この聖域はもっと 明るいから!>と言い切っているところに、強さの変化を感じます。

インタビューカット2

私もここにいちばんの変化が表れている気がします。<ワンルーム>から、<聖域>という神聖な場所へ進化したようなストーリーも綺麗に繋がっていますし。とくにナナヲアカリをずっと追ってくれているひとは、「ここまで成長したんだな」と思ってくれるんじゃないかな。「ギミギミ聖域」の最後のロングトーンも、キラキラした希望がさらに広がっていくイメージで、力強く歌うことを意識しました。

―― 「ギミギミ聖域」はMVも公開され、多くのコメントが寄せられています。反響はどのように感じていますか?

私が書いたポエトリー部分では、とくに印象に残っている今までの楽曲の一部を、どんどんフレーズに入れ込むという遊びをしてみたんですね。それがMVで映像によって補完されるという形になっていて。でもMVが出る前から、曲を聴いただけで「あの曲だ!」って気づいてくれている方もいて。「すごい!こんなに気づいてくれるんだ!」って驚きましたし、嬉しかったです。

―― 作詞・作曲を手がけられているナユタン星人さんとは、どのようなやり取りを?

ベストアルバムを2枚組にすることが決まったとき、「ワンルームシュガーライフ」と同時に存在していた「ギミギミ聖域」のデモについて、「これ、今こそじゃないですか?」「そうですよね!」という話になりまして。そこから“ナナヲアカリの7年の軌跡を感じられる曲”というテーマが見えてきました。

堀江晶太さんにアレンジをお願いするときには、「あの「ワンルームシュガーライフ」らしさは担保しつつ、圧倒的な進化感、感謝のイメージがあってほしい。聖域(サンクチュアリ)だから、教会をイメージするようなサウンドも入れたい」というお話をしました。そして、もうナユタンさんとも7年以上のお付き合いになるので、ナユタンさんが見てきてくれたナナヲアカリの軌跡を書いていただき。その合間に、私のポエトリーも入れさせていただきました。

―― 「ギミギミ聖域」で、とくにお気に入りのフレーズというといかがでしょうか。

<いまも純然たるマイスタイルなんて アイマイだけど>とか、<つまり純然たるマイスタイルなんて どうだっていいよ>とか、私がずっと歌ってきたテーマでもあるんですね。わかりやすくナナヲアカリを表してくれていて、なおかつ、それをこのエモラインに乗せて歌えるのが、すごく気持ちがよかったです。

あと、<「幸せになりたい」だとか (ダメなとこがいい!)なんて 虚勢で 他人で 歌ってたんだ最初は>というフレーズも、よく見てくれているなと感じました。本当に初期は「どこまで自分でいていいんだろう」とか考えていましたし。ナナヲアカリのインディーズ時代、最初のミニアルバムのタイトルが『しあわせになりたい』だったので、そこを入れてくれたのも嬉しかったです。私の真理をついてくれていますね。

―― では、『フライングベスト2』のDisc1収録曲から、アカリさんが作詞に携わった、とくに思い入れの強い曲を教えてください。

6曲目「Jewel」ですかね。GeGさんとナナヲアカリという、異質なコラボレーションで。GeGさんが、「ナナヲさんをイメージする楽曲デモができたので、自由に歌詞を書いてください」と言ってくださったんです。これはミニアルバム『DOPING!!!!!』収録曲だったのですが、私はミニアルバムなどに入る自作詞の曲では、あまりポップなところを担わないようにしようと意識していて。すべてが明るすぎると自分が疲れてしまうので(笑)。

だから「Jewel」でも、当時の自分の気持ちをただ赤裸々に書きました。ナナヲリスナーは共感してくれるであろう、生きづらさだったり。「それでもなんとか今、みんな生きているやん」という思いだったり。自分事すぎても誰にも届かない気がしていて。<ボクら>の歌にしたほうが、救われることはある。そんな最近のマインドが表れている1曲だなと思いますね。

―― たとえば<やさしい人ってのは好きで嫌い>というフレーズひとつにも、アカリさんの二面性が表れていますね。

そうそう。やさしい人って、余裕がありそうで、羨ましいし、すごく好き。だけど同時に、劣等感をめちゃくちゃ刺激してくるので、すごく嫌い。そういう素の私が出ていますね。考えてみると、私は基本的に、他者に対して「いいなぁ~」という気持ちばかり抱いて生きている気がします(笑)。

―― また、「Jewel」には<また今日を歩いている>というフレーズがありますが、4曲目「どうやったって」の<僕はただ歩くよ>というサビも印象的で。アカリさんは、走るでも飛ぶでもなく“歩く”ひとなのだなと。

おっしゃるとおり。自分の人生は、高速で進んでいるように思えないというか。ずーっと歩いているスピード感なんですよ。だから<歩く>がしっくりきます。そして、ナナヲリスナーには私と同じく、「走り続けるなんてイヤだよ、無理だよ」という方が多い気がして。<また今日を歩いている>も<僕はただ歩くよ>も、自分でも好きなフレーズですね。

―― お話を伺っていても、歌詞からも、アカリさんが“ナナヲリスナー”という存在をすごく意識し、大切にされていることが伝わってきます。

ありがとうございます。正直、他者を意識するようになったのはここ最近のことなんです。何かわかりやすいきっかけがあったわけではなくて。活動をしていくなかで、徐々に徐々に“他者の存在”に対する実感が沸いてきて、その実感メーターが溜まったから「理解」みたいな感覚というか。だからこそ、自分のために歌うことが、誰かの背中を押すことになればいいな、という気持ちも出てきたのかもしれません。

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