日常のなか“私”のrevolution。全10曲入り5年ぶりのニューアルバムをリリース!

 2022年10月5日に“LOVE PSYCHEDELICO”がニューアルバム『A revolution』をリリースしました。5年ぶり8枚目のオリジナルアルバムとなる今作。ドラマ主題歌「Swingin’」や、先行配信曲「A revolution」「It’s not too late」の他、いわゆる“デリコサウンド”と評される全10曲が収録。歌詞中心の取材を受ける機会は滅多になかったというKUMIとNAOKI。アルバム収録曲のお話はもちろん。ともに歌詞を作り上げていく過程、お互いの歌詞の特徴や魅力、そしてLOVE PSYCHEDELICOの歌詞として大事にしている面など、たっぷりとお伺いしました。ふたりの和やかな掛け合いもお楽しみください…!
(取材・文 / 井出美緒)
A revolution作詞・作曲:KUMI・NAOKIOh, well 10 to nothing, we're behind
10 to nothing, we're behind 10 to nothing, we're behind
それでも奪えない僕らの世界の real
A revolution We're gonna make a revolution
Gonna be a revolution Oh, 僕の revolution
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最初にLOVE PSYCHEDELICOの曲ができたときは「なんだこりゃ」と思った。

―― LOVE PSYCHEDELICOは今年で結成22周年になるんですね。結成された大学時代、こんなに長い未来を想像されていましたか?

KUMI まったく想像してなかったね。「1枚アルバムを出せたらいいかな」という感覚。1stアルバムを出してからも毎回、「次が最後」、「次こそ最後」って。私はわりと長い間そうだったかもしれない。

NAOKI 俺も未来なんて想像もしてなかったなぁ。安定的に純粋に、「今が楽しいな。音楽を作ることが楽しいな」って思えるようになったのは、本当に最近な気がするね。若い頃はとにかく必死だったの。

KUMI 仲違いしてとかではなく、なんとなく「ストップしようか?」みたいな話も何度かあったよね。

NAOKI とくに若い頃は、まわりのシチュエーションやスピード感に自分たちがついていかなかったからね。どの世界でもあるだろうけど、大人たちと同じことを思っていなかったり。そういうのが昔はありましたね。

―― それでも、ここまで長く続いてきた理由は何だと思いますか?

KUMI 何だろう…。でも自分たちの力だけではないなとは思う。あまり運命とか使命とかそういう言い方もピンとはこないけれども、「やらせてもらっているんだな」っていう感覚はすごくある。

NAOKI そうだね。ただ趣味的に積み重ねてきたというよりは、わかりやすく言うと、何か続ける目標であったり、理由であったり、そういうものが自然とついてくる感じがあって。それは音楽活動する身として、恵まれているんだと思いますね。

photo_01です。

KUMI 何か役割があったのかなって思うよね。単純に待っていてくれるひとがいることもそう。「音楽って大変だなぁ。やっていけるのかなぁ」って思っているときに、「また聴きたいよ」って言ってもらえると、「よし、とりあえず作ろう」という気持ちになって、どうにか続いてきて、20年を迎えて。それってどちらかというと消極的な姿勢じゃないですか。でも最近やっと、「あぁ、やっていけるな。やっていこう」って初めて自然に思えた。

―― 少し遡りまして、おふたりが人生でいちばん最初に書いた歌詞って覚えていらっしゃいますか?

KUMI NAOKIと大学で知り合って、バンドを組んで、定期的にライブをやっていて。そのときにもうオリジナルを作っていたから、それが最初かな。当時は全英語詞で、私がひとりで書いていた。

NAOKI 僕はただのギター小僧でした(笑)。

KUMI LOVE PSYCHEDELICOになって初めて一緒に書いたんだよね。

NAOKI そう。ふたりで最初に書いたのが「LADY MADONNA~憂鬱なるスパイダー~」ってデビュー曲。

―― 歌詞を読むと、最初からすでに今のLOVE PSYCHEDELICOらしさができあがっていますよね。

KUMI できてたね。最初ビックリしたよね、できあがったとき。

NAOKI 「なんだこりゃ」と思った(笑)。

―― ふたりで歌詞を作るって、どのような流れで行うのでしょうか。

KUMI そう思うよね。珍しいんだよね。歌詞をふたりで書くって。

NAOKI いろんなパターンがあるかなぁ。でも基本的には、本当にふたりで1行1行考えていく。

KUMI 歌詞からできることはなくて、最初に曲があって、メロディーもある程度は決まっていて、そこからキーワードが浮かんできて。たとえば「revolution」とかね。それをテーマにしながら、「どんな曲の内容かねぇ」って話し合いを始めて。

NAOKI そうそうそう。「revolution」って、意味が広いじゃない。

KUMI そこから「どういうrevolution?」って話し合いをしたり。あと、メロディーをずっと繰り返しているうちに、自然なセンテンスが出てきたり。

NAOKI どっちがどこの担当とかも決まってないんだよね。スタジオに集まったときに、「そういえばさ、昨日帰ってから思いついたんだけど、ここのメロディー<10 to nothing>で始まるのどう?」とか、どちらかが言い出して。「それいいじゃん!だったらAメロはこういうフレーズがいいよね」みたいな。そうやって藤子不二雄みたいにね。

KUMI 藤子不二雄さんがどうやって作っているか知らないけど(笑)。歌詞を見ても、どこを自分で書いて、どこをNAOKIが書いたかわからないぐらい融合してるね。

―― なかなか聞かない作り方でおもしろいです。

NAOKI こういうこともあったよ。「Swingin'」のとき、僕が最初に歌詞をパパパって書いたやつを、KUMIが見て、「この歌詞、時系列がないよね」って言って。書いてあったフレーズを1行ずつ全部ハサミで切って、空中にバッって投げたの。

―― え!

NAOKI で、落ちたやつを適当に並べて、それをそのまま歌ったのが「Swingin'」です。どういう順番で歌ってもいいじゃんって。そういう遊び心もあるんですよ。

KUMI あー、そうだそうだ。なんかマンネリを解消したかったんだろうね(笑)。やっぱり曲作りのなかで作詞がいちばん大変な作業なの。だからちょっと楽しく乗り切りたかったんだと思う。

―― 歌詞の作り方や価値観で変わってきた面はありますか?

KUMI 多分私たちはさ、歌詞に限らずそんなに変わってないよね? やっていることとか、やろうとしていること。

NAOKI うん。たとえば、デビュー曲の「LADY MADONNA~憂鬱なるスパイダー~」と今回の「Swingin'」っていろんなこと含めて、とっても自分のなかで似ている。ダンスビートのようなドラムにダンスビートにはそぐわないようなギターの音が乗っていて、そこにKUMIのライムが転がっている。そういう意味では同じコンセプトな気がして。もちろん新しいことにも挑戦はするけれども、根本の部分は20代の頃に好きだった音楽とか、求めていた音とそんなに変わらないよね。

―― きっと初期に作った骨組み、地盤のようなものがとても強固だったんですね。

KUMI そうかもしれないね。

NAOKI ただ、年齢を重ねていくと、会話のなかでもユーモアの在り方って変わってくるじゃないですか。親父ギャクを言いたくなるとかね(笑)。それと同じで、「LADY MADONNA~憂鬱なるスパイダー~」の頃は、ギターに聴こえないようなリフがよくて、オルガンみたいな音にしていた。そういうユーモアだったのが、「Swingin'」では、あんまりカッコよくないスライドギターで始まりたくなった。ハワイアンみたいなかわいいスライドがいきなりボーンって入ってくる。そうやってユーモアの在り方が変化していくので、楽曲自体はそんなに金太郎飴にはならないかなとも思うね。

―― 一緒に曲を作っていくなかで、お互いにご自身の歌詞と異なる特徴を挙げるとすると、どんなところでしょうか。

KUMI どちらかというとNAOKIの書くもののほうがポジティブだね。

NAOKI あ、ホント?

KUMI うん。あんまり影はない。憂いというかね。

NAOKI ふーん(笑)。たださ、最初の時点で「ふたりの曲を書く」ってイメージない? 俺はあるんだよ。

KUMI そうね、NAOKIのほうが一緒に書きながらも、どこか下書きって思っているのかもしれない。自分が書くものは下書きだって。単語もあまり使わない限定的なものではなく、よく使うもので、とりあえずノリはこんな感じとか。あと明るくも暗くもないような、ニュートラルな乗せ方をする。やっぱり私が最終的に歌詞の世界観を仕上げるようなところはあるから。最初に持ってくるときに、すでにその違いはあるね。

NAOKI そうそうそう。俺は「KUMIが唄う歌を書きたい」と思って書いてるから。

KUMI だから世界観を作り込み過ぎないよね。

NAOKI 自分で世界観を作りたい場合はもう、「この曲は全部書かせて」って言う。自分は歌い手じゃないので、自分の歌詞を書く感覚じゃなくて。ふたりの曲をイメージして、たたきを作っている感じですね。

―― NAOKIさんはKUMIさんの書く歌詞についての印象はいかがですか?

NAOKI とくに英語とか、「こんなにシンプルな言葉で、こんなに広いイメージを表現できるんだ!」って、いつもKUMIがポンって出すフレーズで思う。自分はどうしても考えすぎちゃって、理屈こねちゃうんだけど。「あ、悲しみってそんなシンプルな言葉でメロディーに乗って伝わるんだ」って生きた英語にハッとさせられる。

KUMI あら、そうですか(笑)。でもそれは英語のよさでもあるよね。

NAOKI 英語のよさもあるんだけど、そこをKUMIはすごく音楽的にわかっているよね。

―― とくに今回のアルバム収録曲で「すごい!」と思ったフレーズというと?

NAOKI 要所要所でたくさんあるよ。たとえば「It's not too late」とかね。それこそコーラス部分で出てくる、<Itʼs not too late Itʼs not the only way>とか、その場でメロディに合わせてポンと出てきたから。

KUMI 出るときはねぇ。

NAOKI それは意味だけとか、ラインだけじゃなくて、シンプルに短いセンテンスで踊りながらも、意味がすって入ってくるような英語でバシッと入れたりするの。それを感覚的にその場で思いつくから、敵わないですよ。

―― たしかにLOVE PSYCHEDELICOの歌詞は1行でグッと来る感覚があります。それは降ってくるのでしょうか。

KUMI そうですね。難しいことは全然思い浮かばないんだけど、曲のテーマになるようなワンフレーズはパンと出てくる。最初に曲だったり、メロディーだったり、そういうヒントがあるからね。そこにパシッと言葉を乗せる感じ。

NAOKI あと日本語自体が言語の性質として、長い文章を最後まで聞かないと意味が正確にわからないところあるじゃない。たとえば、「今日、天気が良かったので、散歩をしました…、か?」って、最後まで聞かないとそれが質問かどうかもわからない。だから僕たち日本人は日本語の歌を聴くとき、歌詞を無意識に最後まで聴こうとするの。それって、サウンドと一緒にリアルタイムで言葉を楽しむロックの音楽を作るには、ちょっと不利な要素があると思うんだよね。

だから、LOVE PSYCHEDELICOのやり方がいいかどうかは別として、僕らはわりと短いセンテンスで意味をなす文章の連続が多いんですよ。日本語と英語が混じってもいいから、2拍とか3拍のメロディーのなかで必ず1回意味が完結する。たとえば<I saw you in the Rainbow>ってあったら、最初のリズムのところで<I saw you>で「何があったか」わかる。次はすぐに<in the Rainbow>で「どこでなのか」わかる。歌詞を書くときは日本語であってもどこかそういう工夫をしていますね。なるべく短いセンテンスで意味がポンって入る、サウンドに身を委ねる、その繰り返しですね。

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