最後まで通して聴いてほしい…!恋と愛の記憶をたどったMajor 1st ALBUM!

 2022年6月1日に“マルシィ”がニューアルバム『Memory』をリリースしました。心の中から消えることのない様々な“Memory=記憶”をひとつの作品として表現した今作。サブクスチャートを賑わせてきた「白雪」や「プラネタリウム」といった配信曲に加え、新曲4曲が収録されております。今回は、吉田右京(Vo.&Gt.)にインタビューを敢行。なぜ、マルシィのラブソングはこんなに切なく、こんなに共感できるのか。その魅力の秘密は、「好きになるって怖いことでもある」と語る、吉田右京の恋愛観のなかに…。歌詞について、恋愛について、じっくりお伺いしました。
(取材・文 / 井出美緒)
ラブストーリー作詞・作曲:吉田右京いつまでも握っていたかった糸は 赤じゃなかったんだね
解れてしまった二人の未来 結び直せない
最後の恋を君としたかったんだ ずっと見ていたかった
出逢ったあの日に戻りたい
縫い合わせすぎたこの恋はきっと あまりに脆すぎた
あなた以上なんていないのに
もっと歌詞を見る
僕は恋愛において、男としての理想からかけ離れた場所にいる。

―― 右京さんは、いちばん最初に心を動かされたような記憶というと、何が思い浮かびますか?

最初かぁ…。感動とはまた違うけど、両親が音楽好きなので、わりと日常のなかでずっと何か曲が流れていたし、子どもの頃なんかはよくGReeeeNさんとかジェロさんとか口ずさんでいた記憶があります。あと小学生の頃って、音楽の授業でリコーダーを吹いたりするじゃないですか。もしかしたら、それが“音楽をやる側”として、「音楽ってすごく楽しい!」って思った最初の感覚かもしれないです。

―― 自分の経験や感情を言葉にすることも、子どもの頃から得意だったのでしょうか。

いや、そんなに得意ではありませんでした。ただ、ひとつ覚えているのは、これも小学校の音楽の授業で、「曲を聴いて、その感想を書きなさい」という課題があって。そのとき僕、感想じゃなくてひとつの物語を書いたんです。それを先生にすごくビックリされて。だから多分、無自覚だったけど、物語を作るみたいなことは昔から好きだったんだと思います。

photo_01です。

―― 歌詞はいつ頃から書きはじめましたか?

ちゃんと曲として書いたのは、「Drama」が最初です。これはマルシィになる前に作ったもので。当時は、どこか殴り書きのような感じもありました。自分の素直な感情を吐き出すように書いていたというか。でも今は、俯瞰して歌詞を見つめ直すことも多くなりましたね。より良い言葉がないか考えたり、メロディーとの相性を確かめたり。真剣さが増すにつれて、選択も慎重になってきたと思います。

―― 歌詞面で影響を受けたアーティストというと。

特定のアーティストというより、聴いてきた音楽がいい具合に混ざり合っている感じですね。たとえば、宇多田ヒカルさん、GReeeeNさん、aikoさん、back numberさん、Official髭男dismさん。幅広く少しずつ影響を受けていると思います。

―― 自分の歌詞がちゃんと聴き手に届いている実感があったタイミングというといかがでしょうか。

「絵空」をリリースしたときですかね。最初に「Drama」のMVも出したんですけど、あのときは届いているとかそういう次元ではなくて、出したこと自体に喜びを感じていた気がして。数字がじわじわ伸びていっても、あまり自分事として考えられてなかったところもあるんです。それが「絵空」のときやっと、ちゃんと届いているんだなと実感することができました。

「絵空」のMVのコメント欄を読むと、「あ!そこがいいと思うのか!」って、意外なところに注目してもらえていたりして。あと印象的だったのは、聴いてくださったひとが自身の恋愛体験談を書いてくれるんですよね。で、別のひともそれを読んでまた反応している。自分が発信したものからまた何か生まれていっている様子を見たとき、すごく嬉しかったです。

―― マルシィといえばラブソングですが、とくにひとの弱いところをわかってくれる、そこに寄り添ってくれる歌詞が印象的だと感じます。それは活動していくなかで、徐々に確立していった個性なのでしょうか。

そうですね。自分の人間性もどんどん歌詞に出ているんだと思います。曲の種は主に、僕の実体験なんですよ。もしくは、自分の感情が動いた経験を、落とし込んで広げて書く。どんな物語であっても全曲、自分発信なんです。僕はかなり弱さを抱えているタイプだから、自然と負の感情に寄り添うような歌詞になっている気がしますね。とくにこの1stアルバムはそういう面が強いです。だから逆に2ndアルバムではちょっと違う書き方もしてみたいなとも思っています。

―― ご自身発信で作っているのに、多くの方から、「なんでこんなにわたしの気持ちをわかるんですか?」という声が上がる共感力の高さがすごいです。

いつも、「本当に!?」って思います(笑)。でも、とくに女性の方にそういっていただけると嬉しいですね。友だちと話していても思うんですけど、僕は恋愛において、男としての理想からかけ離れた場所にいると思っていて。男らしくない。弱いし、女々しい。だからこそ、そこに共感してもらえるのは嬉しくて。

―― よく、『男は最初の男になりたがり、女は最後の女になりたがる』と言いますが、「プラネタリウム」には<君の最後になりたいんだ>というフレーズがあったり。

絶対に最後がいいですよ! だから僕は逆に、「なんで最初がいいの!?」って思います(笑)。

―― また、マルシィのラブソングは器が大きいですよね。聴いてくださる方のシチュエーションを狭めてしまわないというか。

まさにそこは意識している部分なんです。誰でも自分事として受け取れるような歌詞を書きたくて。だから歌詞には、自分の感情面の実体験のみをガッツリ入れて、情景描写はかなり少なく抽象的にしていますね。ただ、第2フェーズでは具体的な物語性をより濃くしてみようかなとも思ったりしています。

―― 曲って、どんなときに生まれることが多いですか?

最初の頃は、ちょっと怒りと悲しみが混じったようなときとか、自分が負の感情寄りなときに、バッっと書くことが多かったですね。最近は時間があれば、ずっと曲を作っていて、なんとか生み出そうとしています。でもやっぱり幸せなときよりは、ネガティブなときのほうが言葉は生まれやすい気がします。

―― ちなみに右京さんはサウナ好きとのことですが、サウナで“整う”ことで、曲が生まれることもあるのでしょうか。

1回サウナで整いすぎたことがあって。「これはもう最高だ!」と家に帰って、できたのは「サウナの歌」って曲でした(笑)。曲ができるというより、僕はかなり考え込んでしまうことが多くて。歌詞も煮詰まっちゃう。そういう頭の負荷が大きいとき、サウナに行って、まっさらにしたくなるんです。白紙に戻してから制作したいとき、結構サウナは大切ですね(笑)。

123