この曲には“平井 大はこういう人間です”というのが表れているかも。

―― 「題名のない今日」と「Romeo+Juliet -Love goes on-」は、今年になってからリリースされた新曲ですが、アルバムのテーマなどを踏まえて書いたのでしょうか。

いや、まったく考えませんでした。単に去年の2週間に1度のペースを崩したくなかったんですよね。一回休んじゃうと、もう休むのが楽しくなっちゃうタイプなので(笑)。なんなら今でもスタジオに行って曲作りをし続けています。だからアルバムを作った感覚が一切ないんですよ。気づいたらできていた感覚です。

―― 「題名のない今日」の冒頭<例えばどんな理想も描ける 魔法のペンをもらったとしたら ボクはどんな世界を描くのかな? キミならどんな未来が欲しいのかな?>という問いかけは、どんなきっかけから生まれたフレーズですか?

なんとなくファンタジーな感じにしたいと思って作り始めたんです。ちょっと『アラジン』のジーニーっぽいじゃないですか。それで「どんなことでも叶うとしたら?」というところからスタートさせました。あとこの曲は、今年の初っ端にリリースしたので、1年こういう気持ちで過ごせたら良いなという提案でもあったり。

―― 大さんが日々発信なさっているメッセージが詰まっている歌詞ですね。

そうなんですよ。とくに1番のサビ2行の<なにげない日常に花束を なにげない景色に額縁を>というところは核ですね。それがすべて。あと僕は2番の<今は名もなきエキストラだとしても いつか世界を救う 未来のキミがヒーローさ>というフレーズも好きです。今を精一杯に生きているひとには、必ず明るい未来が来ると思うし、そういうひとが明るい未来を築いていくと思うので。そんなちょっと大きいメッセージが詰まった曲になりました。

―― 「Romeo+Juliet -Love goes on-」も、同じくファンタジーな感じがありますね。

あと、みなさんこういうタイプの曲が聴きたいんじゃないかなぁと思いながら作りました。この歌詞はなんか…受けそうな気がしますよね(笑)。だって<シェイクスピアも想定外の とびっきりのロマンス>とか<ディカプリオも想定外の とびっきりの結末>とか、なかなかないですもん。結構おもしろいんじゃないですかねぇ。

―― <すれ違うシーンも布石にしちゃって 誰もがココロ打たれるエンディングを迎えよう>というフレーズは、アルバム全体を包み込んでくれるかのようにも感じられました。

ここは結構、僕が日常で実感していることでもあって。愛し合っている二人だと、悲しいときとかケンカをしてしまったときだからこそ、言えることや聞けることもあるじゃないですか。そういう時間がハッピーエンドの布石になるんだろうなと思うんです。あと<クセの強い Romeo と気の強い Juliet>とか<時間を守れないボクと五分前に来るキミ>ってフレーズがありますけど、これも完全に僕自身(笑)。そしてパートナーはきっちりしていて、気の強いひとなんです。飾らずに書けた1曲ですね。

―― では、アルバムのなかで、とくに「書けてよかった」と思うフレーズを教えてください。

photo_01です。

まず「Life goes on」の<浜辺に残ったままの足跡 あの夏の続きをもう一度 星に問う 明日は来るかな?>というフレーズが好きですね。これはもう知らないひとが聴いても、平井 大の歌詞だってわかるんじゃないかな(笑)。

「EndlessSky」の<No need no more 出来ない理由は Donʼ t wanna hear 聞きたくないし>というフレーズも、すごく僕の心情を表していますね。たとえばスタッフに「タイアップが取れない」と言われたときとか、車の中で口癖のように「出来ない理由は聞きたくないんだよ」!」って言っていました(笑)。あと<常識” のフィルターで見えなくなっていた風景を 真っ白なこの空に描こうよ もう一度>とか歌っていますけど、僕はまったく常識ないですから(笑)。この曲には“平井 大はこういう人間です”というのが表れているかもしれないです。

―― 歌詞を書くときには何をいちばん大切にされますか?

自分が歌って、変じゃないことですかね。それが等身大であることにも通じているでしょうし。だから「このフレーズ、あんまり僕は使わないな」みたいなところで言葉を選んでいるかな。あとは日本語と英語のバランス。サウンドを重視したいときは、英語にしますし、英語っぽく発音した日本語で歌ってみることもあります。だから「Stand by me, Stand by you.」のサビ頭の<これは>は“forever”に聴こえるようにしてみたんです。

―― たしかに!意図されていたんですね。

完全に狙いました(笑)。<これは>って歌ったらカッコ悪いから、どうにか“forever”に聴こえるようにレコーディングしながら考えたんです。結構、僕は歌詞をローマ字にして書いてみますね。音楽ってやっぱり音だから、真似してみたくなるような歌い方だったり、耳なじみが良い発音の仕方だったりを、すごく工夫します。そう考えると歌詞、意外とこだわっていますね。

―― 先ほど、自分らしくないフレーズは使わないとおっしゃっていましたが、使わないように意識しているワードなどはありますか?

自分のことを<俺>って言わないし、相手のことを<お前>って言わないですね。なんかちょっと偉そうじゃないですか(笑)。

―― 逆によく使うワードはありますか?

なんだろうなぁ…。あ、語尾に<~さ>ってよく使っているかも!<何より幸せさ>とか<あの時あの季節のままさ>とか。普段の会話では使わないけど、語感の良さからかな。客観的に平井 大の歌詞を見てみたら、意外とこれが“らしさ”かもしれない。今年は<~さ>を封印してみようかな(笑)。

―― 最後に、これから書いてみたいと思うテーマやシチュエーションはありますか?

やっぱりそれも決めてないんですよね。その時々です。ただ、今後も引き続き普遍的なものを描き続けていきたいという想いはあります。愛だったり、人生だったり。そういうものに対する自分の考えや提案を歌詞にしていけたらいいなと思いますね。


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