良い写真が撮れてInstagramにアップするようなスピード感で曲を作れたら。

―― ちなみに2021年は大さんにとって30代のはじまりの年でもありますね。今回の収録曲「僕が君に出来ること」の<僕が君に出来ること 君の笑顔を一つ増やすこと いつかシワだらけになった頃に 僕のせいだと、君に言わせたい>といったフレーズをはじめ、年を重ねることが魅力的に感じられるような価値観が素敵です。

僕はデニムが大好きなんですけど、履いているとどんどん自分の身体になじんでいって、ほつれとかも出てきて、生活にフィットしていくじゃないですか。肌とかも同じだと思うんですよね。太陽に当たった分、シミができたり。笑った分、シワができたり。それを変に隠そうとしなくていいんじゃないかなって。いろんな変化を含め、今を100%楽しんで、自分のシワも生きた証として誇れるような人生が素敵だと思う。僕はあんまり自分の年齢に対して重きをおいてはいなくて、今を楽しみながら、ナチュラルに年を重ねていきたいですね。

―― 続いていくことで味が出てくるというのは、デニムと同じく、今回のアルバムタイトル『Life Goes On』にも通じてきますね。

はい。今を最大限に楽しみつつ、長い目で自分の人生を見て、ちゃんと自分らしいリズムを刻んでいくことが大事なんだろうなって。やっぱり2020年は大きな変化の年でもありましたし、生活スタイルもかなり変化して…。ただ生きている限り、日々は続いていくわけですから。すごく嫌な日もあれば、いつか良い日も来る。そうやってずっと続いていく日々のなかで、僕の音楽を聴いてもらえたら嬉しいですし、聴いてくださる方のその時々の生活に寄り添うような音楽を発信していきたいなと。そういう想いも込めて『Life Goes On』というタイトルをつけました。

―― 歌詞は“EIGO (ONEly Inc.)”さんとの共作となっておりますが、いつも曲作りはどのような流れでなさるのですか?

photo_02です。

まず僕がメロディーを家で作って、コード進行を決めて、スタジオに行ってプロデューサーと一緒に歌詞の内容を定めていくという感じですね。「今回はこういう曲が良いんだけど」と伝えたら、「じゃあこういうテーマ、比喩表現、キーワードを入れていこう」とか、そういった形で進めていくことが多いかな。わりと最初にたたきの歌詞があって、それを歌ってみて実際の”音”にしながらアジャストさせつつ変化させていきますね。このサウンド感だと、こういうフレーズのほうが良いとか。英語より日本語のほうが良いとか。そうやってだんだんできてゆく感じですね。

―― 「Lonely Beachy Story」では、相手に呼びかける言葉として<Mi cariño>というスペイン語が出てきたりもしますね。

音楽がレゲトンだから、スペイン語を入れたいなと思ったんです。僕のパートナーはちょうどスペイン語を話せるので、スタジオからメールで「何か良い言葉あるかな」って訊いて(笑)。なんか異国情緒があって良いワードですよね。ここ、あんまり引っかかってくれるひといなかったので、寂しかったんですよ(笑)。

―― 人称の表記は<君>である場合と、<キミ>である場合、何か使い分けのこだわりはありますか?

あんまり気にしたことなかったけど、結構「オンガク」とかもカタカナで書いていたりするんですよね。難しく考えたくないときに、カタカナにしている気がします。

―― <ココロ>とか<オトナ>もそうですね。

そうそう。漢字ってヘヴィーになるから。軽いニュアンスで届けたいなと思うときは、表記を変えてみたりしますね。逆に「祈り花」なんかは、重めの曲だからカタカナも使っていないし、呼び方も<あなた>にしていて。そこまで深い理由はないんですけど、フィーリングで書いている感じです。

―― 「Sayonara」は別れの曲ですが、先ほどおっしゃっていた、Instagramのコメントを参考にされた曲でしょうか。

ですね。秋のタイミングで「別れの曲を聴いてみたい」という声がいくつかあったので。珍しく曲に雨の音を入れてみたりして作りました。

―― 切ない歌詞ですね。これでお別れなのに<最後のキス>をする…。ちなみに大さんは、こういう付き合って愛し合ってからの別れって、経験したことがありますか?

いや、僕にはないんですよ(笑)。だから「Sayonara」や「GIRL FRIEND」は、夏の終わりの寂しい気持ちみたいなものを擬人化してラブソングとして書いた感じで、別れの曲の場合はそういうパターンが多いです。ゆえに歌詞がふわっとしていますよね。それが共感に繋がっているのかもしれないですけど。自分のなかで答えを出しすぎないように意識しているところもある気がします。

―― 個人的にはアルバムのなかでもとくに好きな歌詞でした。

僕も良い曲ができたと思ったんです。かと思ったら、意外と「GIRL FRIEND」のほうは人気が出まして。TikTokでダンス投稿をしてくださったり。自分としてはちょっと難しくなっちゃったかなと感じていたんですけど。だからわからないですよね。何が受け入れられて、何が受け入れられないのか。もう数打ちゃ当たるって感じですよ(笑)。

―― 丁寧に作りこまれた歌詞が必ずしも受けるというわけでもなく。

ね。その時々の社会の雰囲気とか、曲調とか、歌声とか、それらが歌詞とグッとひとつになったときに受け入れられるのかなぁ。そういえば、ピカソって描く絵の量がすごかったんですよね。だからこそあれだけ有名な画家になったんだと思います。やっぱりいろんな作品をいろんなタイミングで作っておくことが、大事なんでしょうね。

1曲に対してすごく時間をかけて作るというより、思い立ったらすぐ、良い写真が撮れてInstagramにアップするようなスピード感で曲を作れたら良いのかな。去年も、2週間に1度のペースで1作品だったからこそ、ストレスが少なかったんですよ。良いアイデアが浮かんで、どんどん曲を作って、どんどん出していく感じ。それで「これは受け入れられた」「これはそうでもなかった」って反応がわかるのもおもしろかったし。その都度、SNSでお客さんとコミュニケーションを取れたのも楽しかったです。

―― いちばん反響が大きかった曲というと、やはり「Stand by me, Stand by you.」ですね。

そうですね。でもこの曲なんかもう、絶対にヒットしないと思っていたんですよ。作る猶予が4日間ぐらいしかなかったし、20分ぐらいでできたし。時間がなかったこともあり、とくに自分自身のリアルが反映されています。実際、本当に女性には<勝てない>ですもん。まぁこういう曲の反響が大きかったこそ、考えすぎて作るのって良くないのかなって改めて思いましたね。

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