行けるところまで駆け上がる!火曜ドラマ『G線上のあなたと私』主題歌!

 4人組バンド“緑黄色社会(愛称:リョクシャカ)”がニューシングル「sabotage」をリリースしました。タイトル曲は、波瑠の主演ドラマ『G線上のあなたと私』主題歌として書き下ろされた楽曲です。婚約破棄され、仕事までも失った主人公が、藁にもすがる気持ちで大人のバイオリン教室に通い始めるところから幕を開ける物語。インタビューには、そんなドラマと並走する楽曲を作り上げた、ボーカル・長屋晴子に登場していただきました。歌詞は相談相手のような存在であり、必ず自分の気持ちとリンクさせながら曲を作るという彼女。ドラマの主人公と自身のどんなところが重なり、どのようにフレーズに現れたのか。リョクシャカファンやG線ファンはもちろん。今<自分らしさ>を探している方、是非、最後までご熟読を…!

(取材・文 / 井出美緒)
sabotage作詞・作曲:長屋晴子せーので駆け出したはずなのにどうして まるで私だけがサボタージュ
YESかNOの間でなんとなく生きて まとわりついた悪いクセ
そんなはずはない だって集めてきた 好きなモノやヒト
あれ なんだったっけ
なんだか今なら 愛されるより愛したいとさえ思う
まだ間に合うかな 私このまま消えちゃわないように刻むの
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私はメンバーにすら胸の内を明かすのが難しいタイプで…。

―― 緑黄色社会が主題歌を担当している、ドラマ『G線上のあなたと私』では、登場人物の三人がそれぞれ人生の最悪な時期に音楽に出逢うことで物語が展開していきますが、晴子さんにとって一番影響が大きかった音楽との出逢いというと?

いろんなタイミングがありますが、一番大きいのは“大塚愛”さんの曲を聴いたときだと思います。小学校くらいの頃に「さくらんぼ」が流行ったんですね。それを聴いたとき、良い曲だなと思ったのと同時に、大塚愛さんという存在をすごく好きになって、初めて誰かのCDを買って。そこでシンガーソングライターという言葉も知ったんです。もともと歌うことは好きだったんですけど、曲って自分で作れるんだ!そういう仕事があるんだ!って。いつか自分もそういうことがしてみたいと、うっすら思うようになったタイミングでしたね。

―― その「うっすら」が決意に変わっていった明確な時期もあるのでしょうか?

いや、よく聞かれるんですけど、実はないんですよ。でもなぜかずっと「私は音楽をやっていくんだろうな」とボンヤリ思っていました。逆に、自分が何か他のことをするとか、会社に就職するとか、そういうビジョンはまったく見えていなかった。想像ができなかったんです。だから「音楽でやっていこう!」というより、自分には音楽以外できないだろうなという感覚でしたね。

―― 緑黄色社会を結成したのは高校のときだそうですが、活動していくなかで「こういうバンドになりたい!」というビジョンの共有はありましたか?

それはありました。組んだ頃からみんなで言っていたのは、国民的なバンドになりたいということ。それは共通の認識として最初からあって。結構メンバーそれぞれ、聴く音楽のジャンルは違うんですけど、J-POPが好きというところだけは同じで。だからこそ、お茶の間に浸透していけるような存在になりたいねって話をしていましたね。

―― 今回のドラマ主題歌でその“国民的なバンドに”という夢に、グッと近づきましたね。

そうなんですよ。自分たちも、とくに学生の頃なんてすごくドラマを見ていたし、好きなドラマが放送された翌日は、その話題で持ち切りみたいなところもあるじゃないですか。しかもそういうドラマの主題歌って印象に残りますよね。それを今の自分たちが担当させてもらえているということがとても嬉しいです。

―― 緑黄色社会の楽曲の歌詞は、ほとんどが晴子さんが手がけられていますが、作詞面でスランプに陥ることってありますか?

めちゃくちゃ多いです(笑)。多分、私は難産タイプですね。出てくるスピードが遅いし、気持ちが自分とリンクしないと書けないし、書くための想いみたいなものがかなり溜まってからじゃないと書けないんです。でも、人間の感情って日々移り変わるもので、いつでも同じことを考えているわけではないじゃないですか。だから想いが爆発した瞬間には書けるんですけど、なかなかそこにたどりつくのに時間がかかりまして…。

―― タイアップ楽曲のほうが“気持ちをリンクさせる”という部分で、難しかったりしますか?

うーん、どうですかね…。でも、ある程度のヒントをいただけることが多いので、そのキーワードや物語に自分の感情や体験をリンクさせて、広げていきやすい感覚がありますね。そこで新しい感情に気づけたりとか、新たな発見があったりするので、何もないところから作り出すのとは違う面白さがあって、楽しいです。逆に、自由に書いていいときのほうが難しいのかな。

―― では、タイアップ関係なく自由に書く、という状態だとどんなときに書きたいと思うことが多いですか?

photo_01です。

何かしらで悩んだときとか、気分が落ちているときですね。私の歌詞ってポジティブなものは少なくて。一見、ポジティブそうに聴こえても、実はネガティブな想いが芯にあったりする曲が多いんですよ。私自身が、ネガティブな歌詞に救われてきたから。もちろんポジティブな感情の共有の良さもあるけど、なんだろう…負の感情のほうが分かり合えるものがあると思っていて。なので、自分のネガティブを出すことで、同じように悩んでいるひとが結果、少しでも前を向けたらなって気持ちで書くことが多いです。

―― また、ご自身の気持ちとリンクすることを大切になさっているということは、年齢や環境と共に書きたいことも変わっていきますよね。

はい、10代の頃と24歳の今とでは全く違います。そもそも、最初に作詞をしたときって、自分の気持ちを書くことが恥ずかしかったんですよ。だからあえて抽象的な歌詞にしていて、何を言っているのかよくわからないような内容がほとんどでした。恋愛の曲なんかも書けませんでしたし、書いたとしてもかなりボカシていました。

―― それは「バンドとしての曲だから」という気持ちからでしょうか。

それもあります。あと、私はメンバーにすら胸の内を明かすのが難しいタイプで。普段から、誰かに自分のことを話したり、気持ちを主張したりすることが本当に苦手だったんです。でもそれが活動を重ねるにつれ、だんだん“歌詞にならできる”と変わってきまして。最近は【愛ってなんだろう?】と、よく考えていますね。それは恋愛に限ったことではなく、家族や友達に対するものだったり、それこそ『G線上のあなたと私』のセリフにもあった【人間愛】だったり。やっぱり【愛】って人生における永遠のテーマだと思うので、今の私はいろんな【愛】について考えながら歌詞を書いています。そういう歌詞を書けるようになったのは、大きな変化だと思いますね。

―― ちなみに、晴子さんが描く主人公の性格や特徴には、どんな傾向があると思いますか?

とにかくあまり自信がないです。きっとどの主人公も。でも、自信はないけれど、何か漠然とした理由で頑張ろうとしているというか。「とりあえず」や「なんとなく」が起爆剤だって良いから、進んでいるというか。そういうガムシャラな主人公が多い気がします。まさに今回の「sabotage」もそうですね。

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