すごく痛かったし、苦しかったし、悩んだし、時間もかかった

では、全12曲の中でとくにこのアルバムの核になっていると感じる曲を選ぶとしたらどの曲ですか?

高橋:やっぱり今回は「BEAUTIFUL」と「Mr. Complex Man」かなぁ。歌詞が対極ですからね。美しくない自分のことがキライだといっている人が、美しいことについて歌うってかなり矛盾しているようですけど。でもアルバムラストの「BEAUTIFUL」がセルフカバー曲の「象」を除けば一番最初にできた曲で、1曲目の「Mr. Complex Man」が最後に出来た曲なんです。どこか自分の中で2曲の繋がりを意識していたんだと思います。あと、ダークホースというか、これまでなかった曲という意味で「拒む君の手を握る」は新たな一歩を踏み出したかなぁと思います。“なんなのその二人の関係は…”みたいなところを匂わせる感じにしたかったんですよね。拒まれているのに握るんですよ、手を(笑)。これもやっぱりコンプレックスを抱えたダメな男ですね。

ちなみに、その「拒む君の手を握る」以外の11曲すべての歌詞に“笑う”や“笑い合う”というワードが描かれていました。“笑顔”というのはやはり昔も今もこれからも、歌の中で意識していこうと思う言葉なのでしょうか。

高橋:わ〜、もはや無意識ですね(笑)。去年リリースしたベストアルバム『笑う約束』でもそう言われたんですよ。収録曲の中に“笑う”って言葉が何個も入っているって。僕は気づいていなかったんですけど、スタッフやライターの方にも言っていただいて、あ〜そうなんだぁって。やっぱり笑っていたほうが良いなって想いがすごく強いんでしょうね。単純に笑顔が好きなんですよ。ただ今回11曲も“笑う”が入っているとは思いませんでした。もっとボキャブラリーを増やさないとダメですね(笑)。

また、今作には様々なテイストのラブソングも描かれていますが、優さんにとっての理想の恋愛とはどのようなものでしょうか。

高橋:僕の理想は…う〜ん、話していて面白い人がすごく好きなので、なんか同じ映画を観たあとに、いつまでも話が尽きないような時間とかいいですねぇ。

優さんはすごく映画がお好きなんですよね。最近、何かオススメの作品はありますか?

photo_01です。

高橋:最近は…まず『シンゴジラ』は素晴らしい。2回観に行きました。スーパーレイトショーとかいう0時過ぎの上映で(笑)。あと『恋人たち』という邦画をDVDで観て、まぁ決してポジティブな内容とは言いがたいんですけど、かなりグサッとくる映画でした。『ぐるりのこと』って映画を作った監督の作品ですね。それと岩井俊二監督の『リップヴァンウィンクルの花嫁』かな。あれはちょっと長くて3時間くらいあったんですけど、不思議とそんな時間を感じさせないくらい続きが気になるというか。「え?どうなるの?え?え?え?」みたいな連続で終わっていくんです。しかもそんなに大事件が起こるわけじゃないのに、ガーンって衝撃をくれるのが岩井俊二さんの映画の素敵なところですねぇ。

『恋人たち』も『リップヴァンウィンクルの花嫁』もじわじわとドン底に陥って、でも最後にはほんの少しだけ前を向けるような作品ですね。

高橋:そう、そういうちょっと陰のあるというか、落ち込ませてくれる作品が好きなんですよねぇ。あとかなり昔の映画で言うと、洋画の『IT-イット-』ってホラー映画がこれまた3時間くらいの長い物語で、ピエロが子ども達を殺しに来る話なんですけど、オチ以外はすごく面白いです(笑)。オチで「え〜?」ってなりました。でも僕は、映画全体でどれくらい楽しませてくれたかというところが大事なので、たとえオチが結構安っぽくても、そこまでワクワクさせてくれたなら良い映画と言いたいですね。だから『IT-イット-』もオススメです。

最近「歌詞が良いなぁ」と思うアーティストを教えてください。

高橋:ん〜、めっちゃいるんですよねぇ、ちょっとiPod見てもいいですか?……あ、最近のイチオシはまず“Suchmos”かな。「STAY TUNE」はとくによく聴いていますね。あと“フレデリック”だ。新しいアルバムめちゃくちゃ楽しみなんです。「オンリーワンダー」とかすげー良い曲だし。“WANIMA”さんも、なんかパーって太陽みたいで、前向きで、聴くと元気もらえるから大好きですね。僕にとって必要な音楽です。ただ基本的には、映画と同じでちょっと暗めで陰があるというか、捻くれているくらいの感じが好きなので、“amazarashi”とかもよく聴きますね。

たくさんお聴きになるんですねぇ…!

高橋:うん、人気どころの“back number”とか“SEKAI NO OWARI”とか“ゲスの極み乙女。”とかも好きですよ!あと、永遠にずーっと大好きなのは“竹原ピストル”さん。もうあの人に歌われたらなんでも好きになっちゃうくらいに好きです(笑)。竹原さんは年齢的にも僕より先輩ですけど、“野狐禅”という2人組のユニットで音楽をやられていたときから、本っ当に歌詞の世界が凄すぎて、僕はただただ勉強させてもらうというか、毎回いちファンとして新譜を楽しみにしていますねぇ。大ファンです。

優さんは今年“秋田でのフェス”という大きな夢も叶えられましたが、これからの夢はなんでしょうか。

高橋:そうですねぇ…。そのフェスは「これから毎年やって、秋田の13市を回りたい」と言っていて。今年は僕の地元の横手市というところでやったんですけど、それを毎年ちゃんと成功させていくことがとても大変なことだと思うので、まずは秋田でのフェスをひとつひとつ叶えていきたいです。あとは、もっとこう…いろんな力の抜き方や入れ方を覚えていきたいですね。今回のアルバムは本当に、自分の全身をナタで叩き割って残したようなアルバムなんですよ。すごく痛かったし、苦しかったし、悩んだし、時間もかかったし。決して「楽しかったですよ〜!」とは言えないような…。こういうことばっかりやっていたら続かないなぁ…と思ったところもあるので、もっと自分のやり方をしっかり確立して、みなさんにずーっと、一生、死ぬまでちゃんと想いを作品にして歌っていける人になりたいですね。

ありがとうございました!では、最後に歌ネットを見ている方へのメッセージをお願いします。

高橋:歌詞カードとかを重要視されなくなってきたこの時代に、歌詞を見てもらえているということがとても嬉しいです。ミュージシャンの方々は歌詞に強い想いを込めて歌っている方が多いと思うし、僕もそのひとりなので、是非メロディーと一緒にでも、時にはメロディーを聴かずに歌詞だけでも、読んでみてください。これからも歌ネットと高橋優をよろしくおねがいします…!


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