僕らって、一番を取れるバンドではなかったんです。

『フレデリズム』というアルバムタイトルはどのように決めたのですか?

康司:前から“フレデリズム”という言葉自体はあったんですよね。僕らの曲に対して「中毒性がある」とか「頭から離れない」とか言ってもらえていることを『フレデリズム現象ですね』って。デビュー後からどんどんそのワードが広まってきて、自分たちでもすごく良い言葉だなぁと思っていたんです。だから1stフルアルバムを作るとなって、どんなタイトルにするか考えたとき「“フレデリズム”でしょ」と、3人一致で決まりました。

また、アルバムタイトルだけではなく、収録曲のタイトルも1曲1曲にインパクトがありますね。これは直感的にパッと思いつくことが多いのでしょうか。

康司:いや、結構じっくり考えます。タイトルから想像してもらってワクワクさせるのがすごく好きなんですよ。絵本とかもそうじゃないですか。だからそういう意識でタイトルは付けていて、曲の歌詞に引っ張られるようにして出てくることもあれば、最初にできていることもありますね。今回のアルバムの収録曲だと「音楽という名前の服」がとくに気に入ってます。

収録曲は、まず1曲目の「オンリーワンダー」からまさに“中毒性”がMAXですね!この曲は、プロのテニス選手を目指していく高校生を描いたドラマ『ベイビーステップ』の主題歌でしたが、ここまでダイレクトな“応援歌”というのは、フレデリックにとって新しい挑戦だったのではないですか?

康司:そうですねぇ。“応援”をテーマに曲を作ることも初めてでしたし。でも僕ら自身、たくさんの人に応援してもらっているからこそ活動できているので、「オンリーワンダー」を作るとき、自分たちも聴いてくれている人をしっかり応援していこうという気持ちがすごく強かったです。あとドラマ『ベイビーステップ』の主人公は、熱心な分、逆に不器用でもあるんです。だけどその不器用さを大切にしてくれる女の子もいたりして。そういう関係って、僕らとお客さんの関係と同じだったりするのかなとも感じました。

photo_02です。

この曲は現在、MVの再生回数が450万回を突破していたりなど、かなり大きな反響が感じられますが、メンバーのお2人は、初めて「オンリーワンダー」を聴いたときの印象って覚えていますか?

隆児:「オンリーワンダー」と同時に何曲かデモを聴かせてもらったんですけど、この曲はその中でも飛び抜けていた感覚がありますね。でもその時からアレンジも歌詞もかなり変わったんですよ。それによってさらに良いメッセージになったと思うし、今回まさにアルバムの1曲目にピッタリな曲だなぁと感じます。

健司:自分にとっては、かなり衝撃的な歌詞でしたね。「フレデリックがずっと伝えたかったことってこういうことだったのかな」って。もともと僕らって、一番を取れるバンドではなかったんです。たとえばコンテストのようなものがあっても、トップになれることがまったくなくて。もちろん自信はあったし、ナンバーワンになれるように工夫してライブをやっていたんですけど、ずっとそこで認めてもらえなかった自分たちがいたんです。

その理由は何だったのでしょうか…。

健司:ん〜それもわからなくて、すごく悩んだ時期があったんですよね。そんな中で、今僕らが所属している「MASH A&R」という会社のオーディションを受けて。一応、最終選考まで残ったんですけど、グランプリは別のバンドが取りました。でも本当はそこで終わる予定が「どうしてもこのバンドだけは残したい」と言ってもらえて、僕らは“特別賞”を頂いたんですよ。だから今こうして所属させていただいているんですけど、当時は全然ピンと来ませんでした。それがこの2016年、康司の書いた「オンリーワンダー」の歌詞を読んだときに初めて「あの時、自分たちって認めてもらえたんだ」って思えたんです。

そのオーディションを受けられたのが2012年ということなので、4年の月日を経て気づけたことなんですね。

健司:はい、一番を取りに行くんじゃなくて、そのままでいいんだって。MASHが僕らの個性を大事にしてくれたから今があって、フレデリックはMASHにとっての“特別”になれたんだなぁということを感じました。そこでやっと「オンリーワンであることの大事さを歌うのって自分たちしかいないんだ」ってわかったんです。こういう形で認めてもらえたバンドだからこそ、その生き方をそのまま見せることで、誰かの背中を押せるかもしれないということを、最初に「オンリーワンダー」を聴いた時に思いましたね。

また、2曲目のアルバムリード曲「リリリピート」をはじめ、フレデリックの楽曲は<繰り返す>ということが大きなキーワードになっています。同じフレーズをリピートするだけでなく、歌詞の内容自体も<音楽は止まない>、<リズムを止めないようにMUSIC>など“続いていくこと”を歌っているものが多いですよね。

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康司:何度も何度も言わないといけない時代だと思うんです。なんで僕らがどの曲でも“リピート”を大切にしているのかというと、伝えたい思いをタイムラインに埋もれさせたくないからで。今って情報量が多くて、いろんなものが流れていますよね。でも、その中で自分たちのメッセージを何度も歌い続けることが、僕らなりの伝え方だなって。やっぱり繰り返し聴くと忘れないじゃないですか。フレーズがずっと頭の中に残り続けて、音楽を聴いていないときでさえもその言葉が思い浮かんだりする瞬間っていうのが、本当に愛情が届いたときなのかなぁと思っています。

一方で、アルバムラスト2曲の「オワラセナイト」「ハローグッバイ」を聴くと、“終わりがあること”もすごく意識されているバンドなんだなぁと感じました。

康司:まさにそうですね、“終わり”と“始まり”がちょうど重なるところって、一歩のステップを踏むところだと思うんです。だからこそ、一歩一歩ちゃんと前に進んでいくためには、“終わり”と“始まり”を繰り返すことがすごく大事だなって。

健司:「終わり」がただの終わりではないということは全部、康司の歌詞に教えてもらったことですね。でも康司の気持ちはフレデリックの気持ちなんですよ。フレデリックってどの歌詞を見ても、やっぱり前に進んでいきたいということを歌っていて。終わりと始まりを繰り返しながら進化していくのは、僕ら自身なんだろうなって思います。曲を作るのは康司ですけど、それを歌って発信していくのは自分なので、僕もいろんなところで「終わりを終わりとして捉えてほしくない」ということを言葉にしていますね。

では、選ぶのが難しいとは思うのですが、3人がそれぞれアルバムの中でイチオシの楽曲はどの曲ですか?

隆児:「バジルの宴」ですね。この曲のギターソロは、勢いで一回だけ録ったテイクなんですよ。インディーズ時代の音源もあるんですけど、それではギターソロを入れてなくて。でも今回は入れようということになり、勢いで弾いたものを採用しました。だから、フレーズを考えて練習して弾いたのとはまた違った、その瞬間のギターの音が込められていると思います。

健司:僕は「リリリピート」ですね。歌詞でいうと<リピートして 今までの関係も 全部リセットするわけないわ 全部背負ったまま>というところが好きです。

康司:あ、俺も同じだわ。

健司:このフレーズってなんか、バンドの覚悟も伝わるかなと思うんです。こういうふうに改めて言葉にすることって大事だと思っているので、自分はアルバムに収録されている全15曲のなかでも、とくに「リリリピート」の歌詞を伝えていきたいなと感じました。

康司:自分が思っていることも、今健司が言ってくれたこととまったく一緒ですね。


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