逆風

俺は憂鬱だった。コンビニの灯りに誘われ、
食べたくもないクリーム色の林檎を一つ買った。
店の内部は週末の気だるさに包まれて、
深くなってゆく気分をはぐらかしてはくれない。

自動ドアで区切られた、過去と未来、昼と夜。
とりあえず未来のほうへ足を踏み出した。
浜辺から風が砂を運んでくるからだろう、
コンクリートの舗道がザラザラする。

素足に履いたローファーが邪魔くさい。
問題はアイツの言葉、
『あなたには誰ひとり必要ないのよ。』
そうかもな…と応えた拍子に真っ白になったよ。

アイツに顔が悔しそうにゆがんだ。
あれからもう6時間、俺たちは会ってない。

追いかけようとして、俺はもう必要ないのかと、
なぜか眩しすぎる太陽のせいにして、止めた。
つき合う前も後も、
適当に遊ぼうなんて
考えたこと一度もなかったし、

まっさらな俺をさらけ出してるつもりだった。
結局、そのまま街に帰る気もしなくて、
岬の手前の駐車場に車を置き、
ちっぽけなエリアを
今まで歩きまわってた。

海より、熱くて透明で、悲しく綺麗なもの、
今の俺はかたくなに拒んでしまう。
いつも、生まれた時から判ってるような目で、
会うたびアイツは優しく俺を見つめるけど、
でも俺は、
もっと心をザラザラにして遠回りして、
それへたどり着かなきゃ気がすまないんだ。

駐車場へ引きあげると、
俺のポンコツが待ってた。
キーをゆっくり回し、アクセルをふかす。
俺たちが一番欲しがったものから
吹いてくるような、
逆風に向かって走った。

Just running against...
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