木津の流れ橋

葭切(よしきり)さわぐ朝まだき
生まれ在所を振りかえり
なんで今更あの娘(こ)を想う
赦しておくれと男が泣いた
こゝは涙の捨てどころ
京まで三里 たった三里の
木津の流れ橋

十方暮れの秋の宵
祭囃子をきゝながら
明日嫁ぐという日になって
五年も待ったと女が泣いた
こゝは涙の捨てどころ
京まで三里 たった三里の
木津の流れ橋

団平船(だんぺいぶね)に乗せられて
昨夜(ゆうべ) 帰って来た仏
花を手向(たむ)ける後家さえ持てず
不憫じゃないかとすゝきが泣いた
こゝは涙の捨てどころ
京まで三里 たった三里の
木津の流れ橋
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