記憶行き

さよなら。
僕の事が思い出せなくても泣かないでね。
お伽の国の嘘だ。ほんとはすこしだけ泣いてほしい。
午前4時。まだ暗い駅。
僕は始発を待っているところ。
消せないメールだらけ。
携帯を開けば、夢灯り。

願いごとひとつだけで、何処まで行けるのでしょう。
君まで続いているレールが優しく軋んだ。

電車は<記憶行き>です。
あのとき、「またね。」と告げた事。

世界が回りだします。
名残の月も白けた顔だ。
遠くへ連れてけたら、よりかかり笑ってられたかな?

硝子の窓に映る、きらめく光の川。
<君駅>通り過ぎて向かってく、最果ての街。

何故かなぁ、穏やかでさ、
理由(わけ)もなくそれがただ恐いんだ。

振子時計。ネジを飲んで動かしてみせます。
全ての日を越えて、息が止まる時まで忘れない

願いごとひとつだけで、何処まで行けたのでしょう。
君だけ居ないような騒がしいホームに降りた。

送らないメール書いた。
携帯を閉じたら、時明り。

知らない君の目には僕はどんなふうに映るだろう――――――。
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