春の夜に

あたたかき春の夜
天空に浮かびし
月のこうこうたる
にゅうはくの光

土のかおりみちて
つぼみゆるむ気配
ただ陶然として
涙こぼれるだけ

桜の花のした
もいちど妻の手をとり
歩むことのぞんだ人は
春をまたずに逝きし

なにより美しく
残酷なる季節
雪に古木倒れ
その跡に芽が吹く

今宵生まれいずる
幼き命に
われ持ちたる全ての
愛の歌を捧ぐ

われ持ちたる全て
愛の歌を捧ぐ
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