さざんか

春に咲く 花よりも
北風に咲く花が好き
そんな言葉を残して 出ていったね
別れのわけも 言わないで
さざんかの花びらが
小さな肩先に こぼれていたよ

やさしさが ほしいのよ
ほかには何もいらないの
いつか涙をうかべて あまえたね
悲しいほどに いじらしく
さざんかの花よりも
かぼそい肩先が ふるえていたよ

春が逝き 夏が逝き
北風寒い冬が来た
いまはどうしているのか しあわせか
はぐれたときは おかえりよ
さざんかの花びらが
そろそろあの道に こぼれるころさ
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