黄昏マーケット

こんなところで出逢うなんて 偶然って恐いものだね
昔愛した君に出くわした 午後のマーケット
遠慮がちに肩を叩く 君に驚いたフリした
先に気付いてて 本当は気付いてて 逃げようとした僕

こんなことになるなら もっとましな
格好して来るんだったと 舌を打つ
しわくちゃのシャツを今 ズボンに入れて
奇麗になった君に 見とれてた

平気顔して並んで歩く 何をどんな風に話し出せばいい?
あの頃なら尽きぬほどに よく喋ったのに
慣れた手つきで野菜を選ぶ 君のカートを覗けば
二人分のパンとビールとしあわせが見えた

いまだに君のことを 好きだとか
いまさら君のことを どうしようとか
そんなこと思わないけど どうしてか
入り口に射す夕陽に 胸が痛い

君はしあわせを、僕は孤独を袋に詰めて
店を出れば 綺麗すぎる黄昏

それじゃねと君が今 消えてゆく
黄昏を背に浴びて 消えてゆく
しあわせの待つ場所へ 消えてゆく
西陽の待つアパートヘ 僕も帰ろう
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