木の字鴉

生まれ木更津 浜風夜風(はまかぜよかぜ)
遠くなるほど 恋しいものよ
まして長脇差(ながどす) 三度笠(さんどがさ)
寄る辺なければ 宛もない
おっと弱音は 柄じゃない
木の字鴉(じがらす)の木の字鴉の流れ旅

知らぬ他国で 袖すり合った
むすめ鳥追い 下総訛(しもふさなま)り
銚子はずれと 酒落てたが
潮の香りの ひと節が
おっと沁(し)みるぜ 泣かせるぜ
木の字鴉の 木の字鴉の一人旅
          
富士のお山が 遠くに霞む
なぜかおふくろ 重なる姿
ちょいとつまんだ びわの実を
噛めば草鞋(わらじ)の 緒が痛む
おっと止(よ)しなよ 里ごころ
木の字鴉の 木の字鴉の侠旅(おとこたび)
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