タイピスト

地味なネクタイ 八時半ねむい目玉で
いつ来るかわからぬ嫁さんと
俺のこどもの将来のために働く
打つも苦手なタイプライター

思えば変ったよ俺も
好きなことして生きていくと
キャンパスに
授業さぼってギターかかえ
歌を作っては未来を夢みたものだが

上目づかいに上役を気にしながら
仕事終りを心待ち
就職に追われ 親にすがられて
夢を捨てた寂しいタイプライター

六時には仕事も終わり
フラフラときどった街へ昔のように
肩をゆすり歩いてみても
声のひとつ誰からもかけられず

俺が手にした女は遊びはぐれの
あまりものなのさ それでも
こよいだけのせつない恋の相手さ
お似合いだろうよタイプライター
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