Lungs

映写室で少女は死んだ――名前がないまま。
許されたバイスタンダー、夢見るテクニカラー。
厭世観は天性だった。肺を満たした論理。
ヒロインだってひとりになって、最期は這ってロンリー。

水のなかで見つけたエデンのラダー。
揺れる光に溶けるだけの縁の花。
愛や憎悪のすべても、幕の裏側のおとぎ話。

プールサイドの乱反射は意味に影をかざした。
立ちすくんだバイスタンダー、褪せていくテクニカラー。
正気だって狂気だった恋の季節のように、
救われたって、行く当てなんて切り捨て去ってロンリー。

巻き戻したら蘇る気がした、触れる未来に透けるだけの頬の赤。
点と線で繋がっていた言葉もサラウンドを回るだけ。

水のなかを沈み続けるフィルム。
眩む視界に愛や憎悪も歪む。
そして最期は静寂の深みで、

名前がないままのあの子に口づける。
×