僕は雨に濡れた

心から笑えないのは
ハリツケている笑顔のせいだ
雨の落ちることのない
この屋根の下に
雫が零れた

陽の面影の覚束ない頃
暗がる空 街濡らす音
灯のぬくもりから遠ざかるように
足は影に向かう

どれほど歩み進めようが
憂う日々からは地続きで
息絶えた声の波止場にて
来ることない迎えを待っている

心から笑えない今日を
流してしまえ 流してしまえ
伝う雫の理由を
泣き止まない空
そのせいにできるから
僕は雨に濡れた

陽の身代わりが街灯に宿る
群がる雲 街濡らす音
寄る辺さえ見つからない根無し草
僕とよく似ている

変わる季節の忙しなさに
やがて足並みはズレていく
半歩遅れの疚しさだけ
肩を並べ僕に憑き纏う

心から笑えないのは
ハリツケている笑顔のせいだ
伝う雫に任せて
この呪いさえも
取り払えるでしょうか

明かりは溶けゆく
藍に混ざりより紅く

心から笑えないこと
忘れてしまえ 忘れてしまえ
伝う雫の理由を
誰にも知られず
笑うことできるから

今日を 笑えない今日を
流してしまえ 流してしまえ
伝う雫の理由を
泣き止まない空
そのせいにできるから
僕は雨に濡れた
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