cream

どうぞ気になさらないで。
私、ただの数合わせです。
どうせ私なんて、隙間埋める添えもののクリーム。

今夜の大注目は、可愛く整ったプリンです。
だけど私だけ、つぶれて型[メイク]も崩れてる。

どうして、ここに居るんだろう。
私も一度くらいは、彼が飛びつくような主役[メイン]になりたいよ。
……なんて。

煌めくヒトミと、芳しいカオリを、
引き立てるための、私はクリーム。
今夜のドラマのエンドロールには、
載せられないエキストラ、でしょ。

私だけ。私だけ。
何かを期待した、まるでバカみたい。
私だけ。私だけ。
あなたのスプーンが来ない。

今夜も大人気なのは、真っ赤に着飾る苺です。
だけど私には、何の色[とりえ]もありはしない。

どうして、ここに来たんだろう。
私も夢にみている、彼女が憧れる流行[はやり]でいたいのに。
……なんて言えないよ。

アイを欲しがって、ホノカに匂わせて、
泡立てるだけの、私はクリーム。
今夜のドラマの次回予告には、
呼ばれないエキストラ、ねぇ。

やりなおしたアイラインも、気合いを入れて着た服も。
ただの添えものが目立っていちゃダメなんだって、
わかってるよ。

終電間近の午前0時には、
彼と彼女はもう約束をしてる。
今夜のドラマの助演女優は、
皿の上でただ溶けて泣いた。

煌めくヒトミと、芳しいカオリを、
引き立てるための、私はクリーム。
今夜のドラマのエンドロールには、
載せられないエキストラ、でしょ。

少しだけ。少しだけ。
あなたの頬に残る、食後のクリーム。
少しだけ。少しだけ。
今夜はその頬に、まだ寄り添っていたいの。
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