ここは港町

裾をはねあげて
傘をなげすてて
いのちの限り
波止場へ走る
白い 白い 雪が舞う
船が 船が うごきだす
情なし鴎 もどってきてよ
わたしをどうするの…
あなた浪(なみ)のうえ
ここは港町

船の灯りさえ
赤い点になる
まぶたのなかで
ふくらむ未練
ヒュルル ヒュルル 風が泣く
胸が 胸が すすり哭(な)く
わたしの敗けね 惚れたらだめね
許して待つだけね…
あなた いつ帰る
ここは港町

恋のほつれ毛を
せめて身がわりに
ひとすじ切って
渡したかった
誰か 誰か 届けてよ
寒い 寒い 日が暮れる
ゆうべのお酒 あの約束は
嘘なの 本気なの…
あなた海峡へ
ここは港町
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