雁の宿

宵の嵐が 嘘のよに
水にさざめく 十六夜月よ
熱いしずくに 波うちながら
抱いて抱かれて 散れたらいいさ…
人目しのんで さだめの恋に
燃えて身をやく あゝ…雁の宿

帯は解いても 解かぬ小指(ゆび)
泣いて謎かけ また困らせる
罪なおまえの 浮世絵すがた
知っていながら 溺れて燃える…
酔って今さら この腕(て)の中で
なにを恥らう あゝ…雁の宿

咲いて実らぬ 白萩が
風にこぼれて 川面を染める
聞けばなおさら 気になる明日を
何故に聞かせる 宵ざめまくら…
夢を見ようか 夜(よ)の明けぬ間に
命かさねて あゝ…雁の宿
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