恋の都営新宿線

彼女はいつも菊川から乗ってくる
水色のイヤホンをして
あまりにも真っ直ぐな前髪
見た目は学生さん
なるべく近くにいれる位置を僕は陣取る
運が良い時は隣にいれる事もあって
その時の幸せな気分と言ったらない
そうして彼女は市ヶ谷で降りて行く

帰りは流石に一緒にはなれない
だけど今日はなんと!
飲み会か何かの帰りらしい彼女に遭遇した
いつもの水色のイヤホンはしていなくて
軽くうなだれて 前髪がそよそよと揺れて
泣いてるの?泣いてるのかい?
うーん どうなんだろ……
そうして彼女は菊川で降りてった

彼女の夢はあんまり見ない
見たとしてもいつもそこは地下鉄の中
そこでも僕はそっと彼女の事を
盗み見るだけ

彼女はいつも菊川から乗ってくる
あれあれ? どうした? あれ?
水色のイヤホンはそのままだったけど
金髪だ! 化粧も濃い!
まっすぐ前を見る眼差しはとても鋭く
この世の全て呪うとでも言いたげなオーラ
どうしたの? どうしたのさ? 一体どうしたのさ……
訊きたい訊きたい でも 訊けない訊けない
どうした?どうした?おい君!どうしたのさ!?
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