沫雪

ひと夜降り続いた 静かな雨が
夜明けに 季節はずれの沫雪にかわった

瓦屋根に落ちて すぐに溶ける
儚い白い雪に 手を伸ばしてみる

薄ら陽と 空のはざまを舞い
束の間だけを ささやかに生きた
あの沫雪のように
あゝあの人の愛も
春を待ちきれないまま
流れていった

愛を語り過ぎた 朝にやってくる
虚ろな静けさの中で 愛した人は……遠い

想い出と呼べるものがひとつ
一本の小さな棘が 胸に刺ったまま

薄ら陽と 空のはざまを舞い
束の間だけを ささやかに生きた
あの沫雪のように
あゝあの人の愛も
春を待ちきれないまま
流れていった

あの沫雪のように
あゝ あの人の愛も
春を待ちきれないまま
流れていった
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