ガーゼ

台風が直撃した朝
ビニール傘一瞬で壊れ
君が転び ヒザ擦り剥いた
雨に濡れながらも笑ったよね 二人

薬局に駆け込んで 消毒液を
ヒザに塗って ガーゼをあてた

ガーゼに僕はなりたい
君の怪我したヒザを僕が守りたい
ふんわり優しく包みこんで
君を狙うウイルスたちを防御したい
冷たい風に舞う ビニール傘は
遠く 羽ばたいていった

台風が過ぎ去った後の
道に落ちてるビニール傘は
誰かの助けを持ってるかのようだ
誰も拾う事もない 切ない光景

君のヒザにかさぶた やっと出来たのに
すぐ剥がすから また血が出てきたじゃん

ガーゼに僕はなりたい
君のかさぶた作りに貢献したい
そっと膝を抱きしめて
君の血小板たちを応援したい
明るい空に浮かぶ入道雲が
僕らを見下ろして 笑ってるようだ

ある日君が飼ってた子猫が死んじゃって
君の涙は止まる事もなく溢れ出して
慰めの言葉も使い果たしてしまった
そんな時こそ 僕は強く思うよ

ガーゼに僕はなりたい
君の心の傷までも癒したい
泣いて泣きじゃくってもいい
僕が君の涙を全部吸い込むから
ガーゼに僕はなりたい
これから先どんな辛い事があっても
僕は永遠に離れない
だから顔あげて 笑顔もう一度見せて

沈黙の中 君がこっちを向いて
「ありがとう」って言ってくれたんだ
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