ぽつり、湯河原

ぽつりぽつりと 灯りがともる
ゆるい坂道 寄り添って
誘い誘われ ちいさな旅が
握る手と手で 揺れている
海を背にして おまえを見つめ
夜の帳(とばり)が 湯河原に

ぽつりぽつりと 語らいながら
初心(うぶ)な仕草に はにかんで
差しつ差されつ ほろ酔うほどに
浴衣姿が もどかしい
酒をこぼして おまえを見つめ
夜の帳が 湯河原に

ぽつりぽつりと 夜更けの雨に
宿の軒端(のきば)が 濡れている
抱いて抱かれて 抱き合いながら
浅いまどろみ 落ちてゆく
腕を枕に おまえを見つめ
夜の帳が 湯河原に
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