大寒小寒

ハァ‥‥
さても一座の皆様方よ
惚れた晴れたの色恋沙汰は
思案の外と譬えにいうが
かくも不可思議 不思議な話

十両三分と引き替えに 売られたこの身にゃ親よりも
後生大事なものがある 二世を誓った起請文(きしょうもん)
十日も姿をみせぬ間夫
悪事がばれて獄門で
来れぬ訳だよ 来たくても
大寒小寒 大寒小寒


格好ばかりの碌(ろく)でなし 噂のたえない札付きに
なんで惚れたと訊かれても 答えられない女には
嘘でもあたいが女房と
命を張って名乗り出て
操たてたい あのひとに
大寒小寒 大寒小寒

そろそろ暦じゃ春なのに
峠の茶屋の紅い灯が
宵の小雪におびえてる
大寒小寒 大寒小寒
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