月の海

みやげやで手にした
ガラスのこびんみたいに
壊れやすい胸で 月を見ていた

つつまれたびんのよに
ぼくらはおたがいを
海辺の小さな家で三日だけ守りあった

嵐の去る その真夜中
月よぼくらに魔法をかけてくれ

月の光は遊ぶ きみの澄んだ肌を
さざめいてさざめいて
さかなになってぼくはきみを泳ぐんだ
波うって

もうふたりで月を
見ることはしないからと
あきらめた頬に 月を映した

ふたりを浄めるために
ふきつける潮風
嵐の海笛を いつまでも聞いていた

嵐の去る その真夜中
月よ光でぼくを射ぬけるかい

月の光は落ちる この黒い海原に
さざめいてさざめいて
魚のままでぼくはいまきみをさがすよ
波うって
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