修道院の廃庭にて

もしも掌に
ひとつだけ花の
根を植えることが
できるとしたなら

いまのわたしは
ひっそりと蒼く
首をもたげる
菫を選ぶ

枯れ果てた涙の
一滴で開くような

かつてのわたしは
身に余るほどの
真紅の薔薇や蘭で
飾りたてて

この手にできぬ
ものなどないと
ただひたすらに
夢追っていた

すぐそばに佇む
愛にさえ気づかずに

風と共に逝き去りし
青く美しい春よ
さあここに巡れ
もう一度だけ

掴まえた重みが
重なる朽花でも

白い骨透ける腕に
流れ昇る温かな
菫色の血よ

あとひと春を
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