マルガリータで乾杯

お前の悲報を聞いたのは 金曜日の午後
とりあえず車に飛び乗り お前の家へ
湘南への道はすでに 渋滞が始まり
焦る気持ちを押さえて 涙を拭いた

降り出した雨でにじんだ フロントグラスの
向こうに やっとなつかしい防砂林が見えた
お前のうちに着くと 波乗り仲間が
信じられないといって集まっていた

乗る人もない板が立てかけてある
物干しには色あせたウェットが雨の中
馴染みの店へ行っても もうお前はいない
マルガリータで乾杯さ お前の笑顔に

子供の頃から二人で波に乗ってた
冷たい雨の降る日も 嵐も台風も
入学式をさぼって稲村まで行った
オンボロスバルで千葉の外れまで行った

恋に破れた悔しさを波にぶつけて
朝まで飲んだ翌日も波にもまれた
お前が初めて彼女を好きだと言ったのも
台風の後でうねる波の上だった

乗る人もない板が立てかけてある
物干しには色あせたウェットが雨の中
馴染みの店へ行っても もうお前はいない
マルガリータで乾杯さ お前の笑顔に

会社に入ったお前は いつも愚痴ってた
忙しすぎて 波に乗れないんだって
それでも月に何度かは二人そろって
仕事忘れて波の上 昔と同じサ

子供が生まれてからは 女房に気を使い
海に来る事はほとんど無かったお前
40をすぎたら二人で また乗ろうぜ
そんな話をしたのが二月前さ

乗る人もない板が立てかけてある
物干しには色あせたウェットが雨の中
馴染みの店へ行っても もうお前はいない
マルガリータで乾杯さ お前の笑顔に
馴染みの店へ行っても もうお前はいない
マルガリータで乾杯さ お前の笑顔に
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