空の駅

ふと目を上げれば 汽車のない線路
線路のない駅 駅のない駅長

ひとつの蜜柑を わたしに差し出して
駅長は言った 「この靴をはきなさい」

野原にぽつんと わたしは立ってる
うつむく背中を 過ぎていく雲の影

ふと目を上げれば 空はいちめんの
大根畠が どこまでも広がる

わたしは歩いた 空の道ひとり
歩いて歩いて 消えていく心

夢で歩いた町を 目覚めても歩ける
夢で愛した人を 目覚めても愛する

はるかな地平線の 彼方で笑う人を
届かぬ地平線の 彼方で手を振る人を

ひとつの蜜柑を わたしに差し出して
駅長は言った 「さあきみの鞄だ」

ひとつの蜜柑を わたしに差し出して
駅長は言った 「さあきみの帽子だ」
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