Eve's Apple

林檎を片手に持って
ある日お散歩に出かけた
それは見事に染まっていた
その娘の傷口のように

2月の寒空のした
ため息は容赦なく突き上げてくるけど
林檎を頬に落としていた昨日までを
忘れたくはない

振り返れば何もない
彼の影さえない
林檎を投げた
あの川に乗って家へと帰るために

林檎を片手に持って
ある日海沿いを歩いた
それは果てしなく深い青
無口な涙と同じ色

いつか見た景色はただ
一人では味気なく映る二人の場所
林檎をかじる彼の思い出の横顔には
何の罪もない

気が付くと誰もいない
写真より冷たい
林檎を投げた
その海を越えてどこかへ帰るために

イブの林檎が
今 落ちた 転げ行く
アダムに会いたい
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