美しいハリケーン

海鳴りに めざめれば
左の腕は ぬけがら
ルージュのついた 吸いがらが
浅い夢のかたみ
美しいハリケーン
激しくて短いよろこび
かすれたお前の 笑い声が
耳もとに残る

人気(ひとけ)ない海岸は
嵐のあとの寂しさ
若い日は 真夏だけの
恋にも酔えたのに
お前は今頃
都会(まち)へ行く列車に乗った頃
大人の恋ほど 疲れに似た
哀しみで終る

美しいハリケーン
思い出は高くうねる波
こうして誰もが 心の夏に
別れを告げる
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