夢が本当になる舟

六月六日 私は六歳 バレエと日本舞踊のお稽古
あんたは学校なんか行かんでもええでと母に言われ
市電にのり ひばりさんの歌を口ずさみながら
先生のところへ毎日毎日通いました

娘は揺られて夢の中
晴れの舞台に立つことが夢で
夢が本当になる舟に乗り
揺られて揺れて花になる
揺られて揺れて花になる

待ちに待った京都を出発する日が来ました
歌のコンクールに出場することが決まったのです
十五歳の時の京都発、東京行きの夜行列車に揺られ
母の配慮で私は一等車大きな希望を抱いて眠りました

娘は揺られて夢の中
晴れの舞台に立つことが夢で
夢が本当になる舟に乗り
揺られて揺れて花になる
揺られて揺れて花になる

何十年も経ちました。街から街へ、ステージからステージへ
まるで飛ぶように走る車の中、寂しくて私は尋ねるのです
お母さんどうしたらええの?
そしたら答えは次の朝生まれているんです

娘は揺られて夢の中
晴れの舞台に立つことが夢で
夢が本当になる舟に乗り
揺られて揺れて花になる
揺られて揺れて花になる
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