幻灯機

「また明日遊ぼうね」夕暮れに溶けた声
脇道へ駆けてゆく 懐かしい影法師
がらんとした校庭に 思い出す笑顔の日々
切なさも憂鬱も 知らなかった五時の鐘

飴玉のセロファンが 枯れ葉に混ざり合い
風に吹かれカサカサ 僕の足元を賑わす

今の目の中は 夕暮れなんかじゃなくて
目紛しい程に 過ぎ去る毎日さ

「またいつか会いましょう」手を離す恋人達
駅前の月影で また一人泣いている

あの日 知らない街で 迷子になれたのは
優しく包んでくれる 帰るべき場所があったから

今の目隠しは 君の手なんかじゃなくて
狂おしい程に 生き急ぐ毎日さ

確かなものが欲しくて ついつい背伸びして
ずる賢さが僕を 大人へ育ててきたのかな

今の目の奥は 悲しみなんかじゃなくて
愛おしい程に 求める毎日
スライドを照らす 幻灯機の光が
瞬きしながら 映し出してくれる
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