セスナの空

眠い風にくすぐられて軽く咳をして
わだちをたどりただひたすらに 刻む足音を 一つ一つ数える
変わりだした季節の色に一度頷いて
木陰の先 駅の向こうに立ち並ぶビルを 一つ一つ眺める

梅雨明けの町を夏が乾かして いくつかの約束がそっと動き出す頃

ガード下の人々にも見えているのかな
白い羽根のセスナがほら青空の中を 淡く淡く彼方へ

探す事も目指す事も創りかけのまま
余白だけが増え始めたあやふやな日々を 一つ一つ重ねる

セミの鳴き声がかすかに響いて いくつかの思い出がそっと目を覚ます頃

片目をなくした野良猫にも見えているのかな
白い羽根のセスナがほら青空の中を 淡く淡く彼方へ

逃げ水が揺れて かげろうが揺れて いくつかの憧れがそっと色褪せる頃

記憶だけの遠い君にも見えているのかな
白い羽根のセスナがほら青空の中を 淡く淡く

走り書きのあの言葉なら届けられるかな
白い羽根のセスナを今青空の中へ 淡く淡く見送ろう
淡く淡く彼方へ 淡く淡く彼方へ
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